自己呈示とは?心理学的な意味やメリット・デメリットを簡単に解説
- 自己呈示ってなに?
- 自己呈示と自己開示って何がちがうの?
- 心理学とか自己呈示って小難しそう・・・
という、イメージを持っている人もいるのではないでしょうか。
「自己呈示」は文字だけ見ると難しく見えますが、内容はとてもシンプルです。
人は無意識のうちに自己呈示しているので、日常生活に当てはめて考えてみるとわかりやすいですよ。
この記事では、自己呈示のメリットやデメリット、自己呈示の種類などを身近な事例を交えて、わかりやすく解説しています。
自己呈示について学び、理想的な自分を手に入れたい方や達成したい目標がある方は、ぜひ、最後まで読んでみてください。
この記事を読み終える頃には、自己呈示をうまく利用し、理想の自分に近づく方法や目標を達成する方法がわかるようになりますよ。
それでは、まずは「自己呈示とは何か」から解説しますね。
自己呈示とは?
自己呈示(じこていじ)とは、社会的に望ましいイメージを他者に与えるためにおこなわれるもので、心理学で用いられる”印象操作”の一つです。
印象操作というと、悪いイメージを持ってしまう方もいるのではないでしょうか?
しかし、さまざまな大学や心理学会で公表されている論文によると、自己呈示はコミュニケーションをとる際に必要な要素であることがうたわれています。
例えば、自身が入社したい会社の面接を受けているところを想像してみてください。
その時、あなたは面接官に自身のありのままの姿を伝えますか?
面接官により良い印象を持ってもらえるように
- 身なりを整える
- 短所を長所に言い換えて伝える
- 本心ではなく相手が望んでいそうなことを伝える
このようなことに気を付けるのではないでしょうか?
これが自己呈示です。
誰しもが、意識的にのみならず無意識下においても、自己呈示をおこない印象操作している可能性があるのです。
このことから、日常的なコミュニケーションやビジネスで成功したい場合において、重要な役割を持っているといえます。
心理学における「自己呈示」と「自己開示」は何が違うの?
「自己呈示」と「自己開示」を大きな枠でとらえると、どちらも自分のことを相手に伝えるという意味です。
同じような意味の言葉ですが、この2つには明確な違いがあります。
それは自己表現の仕方です。
その違いを見ていく前に、まず自己開示について解説していきますね。
自己開示の意味や効果
自己開示(じこかいじ)とは、自分のいいところも悪いところも隠さず、ありのままの自分を素直に相手に伝えることです。
自己開示をすることで、得られる効果はたくさんあります。
- 相手の警戒心を和らげる
- 短期間で相手との信頼関係が築ける
- 社会に対して、自分の能力や考えのギャップを発見できる
- 良好な人間関係を構築できる
などたくさんのメリットが考えられます。
人との距離を縮めるのに効果的ですが、あまり親しくないタイミングで必要以上に自己開示をしてしまうと、マイナスのイメージを与えてしまうこともあるので注意が必要です。
自己開示で得られる効果と正しいタイミングを理解して良好な人間関係を作っていきましょう。
「自己呈示」と「自己開示」の違いは自己表現の仕方
「自己呈示」と「自己開示」はどちらも自分のことを相手に伝えるという点においては同じです。
ではどういった違いがあるのでしょう?
自己呈示と自己開示の大きな違いは、自分のことをどう伝えるのか、その表現の仕方です。
これまでお伝えしてきたように、「自己呈示」は、理想の自分や目的に近づくための手段として”見せたい自分”を表現します。
それに対して「自己開示」は自分のことを知ってもらい、親しみを感じてもらったり、共感してもらったりするために”ありのままの自分”を表現する方法です。
つまり、自分の理想を表現するのか、自分の現実を表現するのかという違いなのです。
自己呈示と自己開示の自己表現の違いを押さえておけば、面接試験やビジネスの場で自分の理想と現実をバランスよく相手に提示でき、円滑にコミュニケーションがとれるようになります。
このように自己呈示と自己開示の違いを理解し、目的に合った表現方法を意識してみましょう。
自己呈示で得られる4つのメリット!
ここまで、自己呈示について紹介してきました。
自己呈示は、相手に良い印象を持ってもらうために見せたい自分を表現することでしたね。
では、実際に見せたい自分を表現すると、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?
ここでは自己呈示の、4つのメリットを紹介いたします。
メリット①自分の意図や目的を実現することができる
自己呈示には、相手を自分の意図や目的をや意図するところへ誘導する効果があります。
なぜなら、自己呈示をすることで、自分の理想である”見せたい自分”を表現できるからです。
例えば「職場で昇格したい!」という目標があるのなら、自己宣伝を積極的におこない、自分がこの企業にとって有能だとアピールするのが効果的です。
大きな仕事を任せてもらえるチャンスが増え、昇格につながる可能性も高くなります。
このように、「昇格したい」という目的に合った自己呈示をすることで自分の目標を実現できるようになります。
メリット②他者との関係が良好になる
初対面の人と良い関係を築きたいと考えたときに、どういう行動をとりますか?
相手に自分を気に入ってもらおうとその人を褒めたり、話が盛り上がるように共通の趣味や話題を探すのではないでしょうか。
自己呈示は、他者とのコミュニケーションが活性化し、関係をより良好にしていく効果があります。
褒められて嫌な気分になったり、同じ趣味を持っている人に嫌悪感を抱いたりする人は少ないですよね。
自己呈示で、はじめによい印象を持ってもらえれば、お互いに気持ちのいい良好な関係が築けるようになります。
メリット③自尊心の維持や高揚につながる
自己呈示には、自尊心の維持や高揚させる効果があります。
自己呈示をすることで、他者から尊敬の眼差しや、同情を得られるからです。
自分の能力が優れていることをアピールするために、ブランド品を身に付けたり、高級車に乗ったりと、他者が羨ましく思うような表現をすることで自身の精神や気分を高めることができます。
また、自分の頑張りや苦労をアピールして、他者からの賞賛や同情を得ることもできます。
このように、他者からの評価や反応を受けることで、自尊心の維持や気持ちを高揚をさせることができるのです。
メリット④トラブルを避けることができる
自己開示のようになんでも素直に自分の意見を伝えてしまうと、トラブルにつながることがあるかもしれませんが、自己呈示はそのようなトラブルを回避できます。
極端な例ですが、友人の提案してきた旅行の計画が自分の好みではなく、「面白くなさそう」と伝えたとしましょう。
言われた友人はどんな気分になるでしょうか?
あまり良い気分にはならないはずです。
このようなことが続くと、友人との関係が良くない方向に進んでしまうかもしれません。
ここで、「面白くなさそう」ではなく、「面白そうだね!でも、わたしはここにも行きたいな」など、相手に同調してから自分の意見を伝えるとどうでしょうか?
お互いの考えを尊重して、気持ちよく旅行の計画を続けられますね。
このように自己呈示は、本音を隠すことで不要なトラブルも回避する効果があるのです。
【自己呈示のデメリット】注意すべきポイントは3つ!
次に自己呈示の3つのデメリットを紹介しますね。
自己呈示を使う目的を間違えたりやりすぎたりすると、人間関係に支障がでたり目標が遠ざかったりしてしまう可能性があります。
これからお伝えする自己呈示のデメリットを参考にして、やりすぎることがないように気を付けましょう。
デメリット①嘘による自己呈示で信頼関係が崩れる
嘘による自己呈示で人間関係が崩れる可能性があります。
自分をよりよく見せたいという気持ちから現れる自己呈示は、嘘をついてしまうことがよくあります。
これらは一例ですが、
- お金持ちじゃないのに、お金持ちのように振る舞う
- 一般企業に勤めているのに大企業に勤めていると言う
- 行ったこともない海外旅行などに行ったと言う
これらのような自分の見栄からくる嘘です。
一つ嘘をつくと、嘘がバレないようにまた嘘をつく、といった悪循環に陥ります。
あまりにも嘘をつき続けると、話の辻褄があわなくなり相手にバレてしまいます。
ウソに気が付いた相手は、あなたを信頼することが難しくなるでしょう。
このように、自分をよく見せようとして見栄を張りすぎると、相手との信頼関係は崩れていきます。
うまくいっているときは良いかもしれませんが、嘘がバレた時に以前の良好な関係に戻ることは難しいでしょう。
デメリット②マイナス評価を受けるリスクがある
自己呈示がマイナス評価につながる原因になることがあります。
「今日は調子がよくないんだよね・・・」「こないだ怪我したところが痛くて・・・」
あなたの友人が、部活動の試合前に毎回こんな言い訳をしてきたらどう思いますか?
たまにアピールされるくらいなら、「調子が悪いんだ。大丈夫かな?」と思えるでしょう。
ですが、このような言い訳を毎回されると、「あ〜また言ってるよ。どうせ言い訳でしょ?」と思ってしまいますよね。
その後の、あなたの友人への期待感や信頼は少なくなるでしょう。
このように、防衛的な自己呈示が続くと他者からの信頼を失くすことにつながります。
結果として、周囲の人たちから期待の目で見られることはなく、自ら評価を下げることになるでしょう。
デメリット③自己呈示のやりすぎで本心が伝わらない
自己呈示は、”見せたい自分を表現すること”です。
つまり、本音を素直に伝えているわけではありません。
ですから、理想の姿で正しいことばかり伝えていると「あの人道徳的な良いことばかり言ってるけど、本音はどうなんだろう?」と相手に思われてしまうかもしれません。
自己呈示ばかりで自己開示がないと、相手からは「なかなか心を開いてくれないな」と、壁を感じてしまいます。
本心が分かりづらい人と親しくなるには時間がかかりますよね。
良好な人間関係を築くためにも、適度な自己呈示を心がけましょう。
主張的自己呈示の種類は5つ!分かりやすい事例で解説
主張的自己呈示とは、なんらかの報酬を得るためにおこなう自己呈示のことです。
他者が自分の思いや、考え通りの反応をしてくれるように印象を操作します。
ここでは、主張的自己呈示の5つの種類を、事例を交えながら分かりやすく解説します。
事例1.取り入り
取り入りとは、相手によく思われるために相手の主張に合わせる自己呈示です。
「気に入られたい」「仲良くなりたい」という気持ちからくる自己呈示であり、他者の好みを考え、自分に何を期待しているのかによって自己呈示の仕方を決めます。
例えば、洋服を買いにお店に入ったとき、店員さんが服を勧めてきてくれたりしますよね?
「よくお似合いです!」「どれも素敵です!」と気持ちを持ち上げてくれます。
店員さんは、あなたに服を購入してほしいので、決して「全く似合わないですね」とは言いません。
褒めておだてることで、あなたの購買意欲を高めようとしているのです。
これが、取り入りの典型的な例であり、一言で言うと”お世辞”です。
目的によって適切な自己呈示を使えば、相手に好印象を与えることができます。
事例2.自己宣伝
自己宣伝とは、自分は有能な人間なんだと他者に思わせるためにする自己呈示です。
「尊敬されたい」「特別扱いされたい」という気持ちからくる自己呈示であり、他者へそれをわかりやすくアピールします。
例えば、高級車、高級マンション、高級ブランド品を身につけるなど他者が羨ましく思うような行動をとり、自分がいかに優れているかを演出します。
これだけでは自己宣伝の効果はただの”嫌味な自惚れ屋”になってしまいますが、ビジネスにおいては良い側面もあるのです。
前述した、会社の面接にはこの自己宣伝が有効です。
自己宣伝を積極的にするには、自分の長所や得意分野を理解していないとできません。
ですから、まずは自己分析をしっかりおこない、そのうえで自分の能力を実現可能な程度プラスして伝えるといいですね。
自分がいかに有能であるかをアピールできれば入社したい企業に内定をもらえる確率が上がります。
自己宣伝の仕方一つで効果はいい方にも悪い方にも働くので、適切なタイミングでおこないチャンスをつかみとりましょう。
事例3.示範
示範は、人の悪口を話している場面で想像してみると分かりやすいです。
「あの人ムカつくよね」と言おうものなら、「そんなこと言っちゃだめ!」と返してきます。
「全然悪口言わないよね!すごいね!」と言えば、「そんなことないよ。当たり前じゃない?」という具合です。
示範とは「自分が道徳心のある素晴らしい人間であるという印象を与えようとする自己呈示」なので、相手が道徳から外れるようなことをすれば否定します。
「こうあるべきだ!」という意識が強いため、自分にも相手にも厳しい傾向があるのです。
この示範の自己呈示をする人は「正義感が強い、立派な人」などの印象を持ってもらうことが目的ですが、度がすぎると”めんどくさい偽善者”になりかねませんので注意が必要ですね。
事例4.威嚇
威嚇の典型的な例は、パワハラ上司といえばわかりやすいのではないでしょうか。
比較的、男性に多い自己呈示です。
不機嫌な態度をとったり、すぐに怒鳴ってきたりするので、部下はいつも上司の顔色をうかがいながら仕事を進めなければなりません。
そのうえ、ミスでもしようものならその権威を利用し「会社をクビにするぞ」などと脅し、部下を思うがままにコントロールしようとします。
威嚇とは、自分がいかに危険で影響力のある人間だという印象を相手に与えるための自己呈示です。
「自分の思い通りに動いてほしい」「やりとげたい目的がある」という気持ちからくる自己呈示であり、威嚇することによって思いを実現しようとします。
また、上のパワハラ上司は意図的に威嚇している例ですが、無意識のうちに威嚇しているケースもあります。
「わかってる?失敗してもらっては困るよ!」など部下に頑張ってもらいたいがために言った言葉でも、本人の意図しないところで威嚇ととらえられてしまうこともあるので注意が必要です。
このように威嚇は意図的であってもそうでなくても、相手に恐怖心を与えるので好感を持たれることはないでしょう。
事例5.哀願
哀願は、女性に多い傾向があるといわれています。
例えば、「私可愛くないし・・・」とか「私はか弱いからこんな重たい荷物は持てない・・・」など他者に同情や協力を求めます。
「私可愛くないし・・・」と言われれば、「そんなことないよ。可愛いよ。」と返す人が大半ですよね。
また、「私はか弱いからこんな重たい荷物は持てない・・・」と言われれば、「私が持ってあげるよ!」と言って、助けてあげるのではないでしょうか。
このように哀願とは、自分は弱くかわいそうな人間だと印象付け、他者に同情や協力をしてもらおうとする自己呈示です。
「かわいそう」「助けてあげたい」と他者に思ってもらうことが目的で、特徴はいつも体調が悪いことや、不幸な出来事をアピールをします。
何かと卑屈になることが多く、マイナスな言葉を使い他者からの同情を求めます。
あまり頻繁にアピールしていると”めんどくさいかまってちゃん”になってしまうため、注意が必要です。
防衛的自己呈示の種類は6つ!意味や効果をまとめ表で解説
防衛的自己呈示とは、自分のイメージがマイナスにならないようにおこなう自己呈示です。
一言で言うと、ミスや失敗をした時の”言い訳”です。
言い訳というと聞こえが悪いですが、自尊心を保つために必要な場合もあります。
ここでは、6つの防衛的自己呈示について簡単にまとめてみました。
種類 | 意味 | 効果 | 事例 |
---|---|---|---|
否定 | 責任も被害も認めないこと | 自分は無関係だと主張する | 「わかりません」 「関係ありません」 と最初から、かかわりがなかったかのようにふるまう |
弁解 | 責任を回避しようと言い訳をすること | 責任の有無をあいまいにする | 「渋滞していたせいで遅刻した」 と責任を転嫁する |
正当化 | 結果を過小評価させること | 責任を軽くする | 「老人に席を譲らなかったのは悪かったが、譲らなかったのは私だけではない」と開き直る |
謝罪 | 責任も被害も認めて謝ること | 反省している気持ちを伝える | 「全ての責任は私にあります。 申し訳ありませんでした」と責任をすべて受け入れる |
セルフ・ハンディキャッピング | 保険をかけておくこと | 失敗した時のダメージを軽くする 成功した時は称賛してもらえる | 最初にハンデがあることを伝え「体調が悪かったから、大会で良い結果が残せなかった」 「体調が悪いのにもかかわらずいい結果が残せた」とどちらでも言い訳ができるようにしておく |
社会志向的行動 | 社会的にふさわしい振る舞いをすること | 自分の地位を保てる | 相手をいじめていたのに「さっきのはふざけて遊んでいただけです」と都合のいい言い訳をする |
自分も経験したことのある防衛的自己呈示があったのではないでしょうか。
とくに弁明や正当化は、多くの人が日常生活の中で無意識に使っていますよね。
あまり言い訳を並べすぎるのも良いイメージを持たれませんが、自分の自尊心やアイデンティティを保つためには必要です。
適度な自己呈示でバランスを取るように意識していきましょう。
まとめ
今回は、自己呈示の意味、メリットやデメリット、得られる効果などを具体的に解説してきました。
最後に記事の大事なポイントをまとめます。
- 自己呈示は、社会的に望ましいイメージを他者に与えるためにおこなうもの
- 自己呈示は見せたい自分、自己開示はありのままの自分をそれぞれ表現すること
- 自己呈示と自己開示はバランスよくすることが大切
- 適度な自己呈示には、意思や目標を達成させる効果がある
- 自己呈示のやりすぎは、人間関係においてマイナスになる可能性がある
自己呈示は、主に自分をよく見せるためにおこなう印象操作です。
ビジネスだけでなく、普段のコミュニケーションでもうまく取り入れられれば理想の自分を表現するでき、目標達成にも一歩近づくことができますよ。
自分自身と向き合い、適切な自己呈示で良好な人間関係を作っていってくださいね。