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森谷俊之

LibRu代表取締役

個人・小規模事業者向けのマーケティング・ブランディングのコンサルタント/セールスコピーライター

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決定回避の法則(選択回避の法則)とは?選択肢が多いと選べない心理や使い方を解説

  • 決定回避の法則ってどんな法則?
  • マーケティングにおける決定回避の法則の活用法が知りたい!
  • 決定回避の法則を活用するためのコツとは?

商品を購入する人にとって悩みの種になるのが、選択肢の多さです。

選択肢が多いことは消費者が興味を持つきっかけになります。

しかし、商品についてあまり詳しくなかったり、自分の判断に迷いがある時には選ぶことが大きな負担となり、選択すること自体をやめてしまう可能性がありますよ。

これは「決定回避の法則(選択回避の法則)」が働くからです。

マーケティングにおいては、決定回避の法則を理解した上で消費者が選択しやすい環境を作ることが大切になってきます。

この記事では決定回避の法則の意味はもちろん、活用事例やマーケテイングで押さえるべきコツについても解説しています

マーケティング戦略として決定回避の法則を活用したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

目次

決定回避の法則(選択回避の法則)とは?

お店で買い物をするときやサービスの申し込みをするときなど、日常生活においてさまざまな種類の中から選ぶことはよくありますよね。

その際、選択肢が多すぎて考えるのが面倒になり、選択することをやめてしまった経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

この心理現象を「決定回避の法則(選択回避の法則)」と言います。

ここでは「決定回避の法則(選択回避の法則)」の心理学的な意味とこの法則を検証した実験について解説していきます

決定回避の法則の心理学的な意味

プリンストン大学の行動経済学者である、エルダー・シャフィール博士が提唱したのが「決定回避の法則」です。

「選択回避の法則」とも言いますね。「決定回避の法則(選択回避の法則)」とは、選択肢が多すぎると決定する(選ぶ)ことを避けてしまう心理現象のことです。

選択肢が多いとより良いものを選びたいという欲求と同時に迷いも出てきます。

この時、人は想像以上に脳のエネルギーを使っているのですね。

そのため最終的に意思決定をしなくなってしまうのです。

商品やサービスを販売する企業からすると、あらゆる消費者のニーズに答えられるように魅力的な商品やサービスをたくさん用意した方が売上に繋がると考えがちですね。

しかし、決定回避の法則により、多すぎる選択肢は逆に消費者から選ばれない結果となるのです。

次にご紹介する実験は、そのことを実証したものです。どのような実験内容なのか詳しくみていきましょう。

決定回避の法則が実証された「ジャム実験」

社会心理学者でもあるコロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授は、選択肢の多さが人の選択にどのような影響を与えるのかを検証するため「ジャムの実験」を行いました。

実験の内容は、スーパーマーケットにて24種類と6種類のジャムを試食販売し、種類の多さが売り上げにどう影響するか、を調べるものです。

結果は次の通りです。

24種類のジャム6種類のジャム
試食率60%40%
購入率3%30%

24種類のジャムの方が試食率が高く多くの人が集まりました。

しかし、購入率は6種類のジャムの方が24種類のジャムの10倍と、大きな差が出る結果となりました。

このことから、多すぎる選択肢は消費者に迷いを与えてしまい、結果的に選択を回避することが分かったのです。

大和証券のCM で広く知れ渡った決定回避の法則

決定回避の法則を名を知らしめたのは、2007年に放映された大和証券グループのテレビCMです。

CMでは、ベビーカー売り場での消費者の様子が描かれていました。

ベビーカーを購入しようと売り場を訪れた際、商品が4種類だけの場合には消費者はその中からベビーカーを選んで購入しました。

しかし、種類が多い売り場では結局ベビーカーを選べずに、何も買わないまま帰ってしまったというものです。

「決定回避の法則」を提唱したエルダー・シャフィール博士も自ら出演し、このように提言しています。

「普通は選択肢が多いほうが、より良いものが選べる」と思うでしょ?

選択肢が増えすぎるとひとはむしろ選べなくなるんだよ。

このCMとエルダー・シャフィール博士の言葉から、マーケティング戦略における「決定回避の法則」がより広く認識されるようになったのです。

決定回避の法則はどう使う?3つの活用事例で解説!

「決定回避の法則」は選択肢が多いことで起こる現象なので、選択を回避させないように意識することで活用できます。

決定回避の法則をどのように使うのか、今から3つの事例をもとに解説します

この方法はマーケティングに繋がるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

事例①使うシーンを絞ったキャッチコピーをつける

キャッチコピーは商品の特徴やコンセプト、想いを消費者に分かりやすく伝える効果的な手段です。

このキャッチコピーにおいて、使うシーンやターゲットを明確にすれば消費者の選択肢を絞ることができます

決定を回避させずに商品に対する関心や購入意欲を維持できるわけですね。

例えばコーヒーでお馴染みのジョージアはコーヒーの種類が豊富で、ブラックコーヒーだけでも6種類あります。

ただ販売されているだけでは、どのコーヒーを選んだらいいのか分からず決定回避の法則により購入に至らない可能性もありますよね。

しかし、ジョージアのコーヒーには、以下のように一つ一つにキャッチコピーがついています。(※1) 

  • ほっと一息、ゆったりリラックス
  • コーヒー専門店ならではのおいしさを。
  • ロングセラーの懐かしさ、さらに旨く

豊富な種類でも「キャッチコピー」を使ってシーンを限定することで消費者が商品を選びやすくなるのですね。

キャッチコピーによって選択肢が絞られるので、消費者も選択することが苦にならなくなるわけです。

(※1)ジョージア公式サイト

事例②フィルター機能を使って選択肢を絞り込む

モノやサービスの充実により、近年では1つのものを購入するのにも選択肢がたくさんあります。

ネットショップでも手軽に商品を購入できるので、利用している人も多いでしょう。

このネットショップにおいて、フィルター機能(絞り込み検索)を使って選択肢の絞り込みが手軽にできるよう工夫されています

ネットショップでお馴染みの楽天市場やAmazonなどでは、生活用品や日用雑貨、家電製品などさまざまなジャンルでたくさんの商品がありますよね。

多数ある商品の中から目的のモノを見つけることは一見難しそうですが、自分の希望する商品の詳細(価格・ブランド・送料込みなど)を入力することで、一人一人のニーズに合わせた商品が簡単に見つけられます。

このようにフィルター機能を活用して選択肢を少なくすることで、消費者が多くの中から選ぶストレスを軽減し、購入へと繋げているのですよ。

事例③アンケートや診断から商品をおすすめする

アンケートや診断から商品をおすすめすることも決定回避の法則の活用例のひとつです。

専門の知識を持った人や詳しい人がユーザーに合ったものを提案し、悩みや不安を解消することで購入を促します。

例えば化粧品会社のオルビスはアプリ機能を使って、パーソナルカラー診断(※2)やスキンケアチェック(※3)をしてその人に合う化粧品の色や肌質に合った基礎化粧品を提案してくれます。

自分に合ったものを自然と絞り込んでくれるため、購入へと繋がりやすいのですね。

知識や自信がない消費者に対しては、アンケートや診断にもとづいて商品の提案をすることで購入に繋がるアプローチができますよ。

(※2)ORBIS パーソナルカラー診断
(※3)ORBIS スキンケアチェック

決定回避の法則をマーケティングで使う時に押さえるべき3つのコツ

選択肢の多さは消費者に興味を持ってもらえるメリットがあります。

しかし、多すぎる情報は選択するうえで消費者の負担になる場合もあるので気をつけなければいけません。

そこで次は「決定回避の法則」をマーケティングで使うときに押さえるべきコツを3つ紹介します。

工夫次第で消費者の負担を軽減し、選択してもらいやすい環境を作ることができますよ。

コツ①おすすめを紹介して選びやすくする

お店の人や専門の知識がある人に「これおすすめです」「これが人気の商品です」と言われると説得力があり、自信をもって選択することができますよね。

例えば、旅行先などでお土産を買おうと売り場へ行くと、種類が沢山ありすぎて迷うことがありませんか。

そんな時「地域限定」や「人気商品」の文字を目にしたり、どんな商品かを少し説明があるだけで商品が選びやすくなりますよね。

また、売れ筋のランキングなどがあれば売れているものを買ってみようと考えるでしょう。

おすすめを紹介することで、選択肢を絞り、消費者が選びやすい環境を作れるのです。

おすすめやPOPなどで適切に商品の内容を伝えることで、消費者のストレスを軽減することができ、購入意欲の維持に繋がることができますよ。

コツ②マジカルナンバーを意識する

人には短期記憶ができる情報の量(数)があり、多すぎる情報はすぐに忘れてしまいます。

この人間が記憶できる情報量(数)をマジカルナンバーといいます。

多くの情報量の中から記憶できる情報のかたまり(チャンク)を意識することで、伝えたい要点を押さえ消費者の理解を促せます。

なので、マジカルナンバーはマーケティングではよく活用されているのですよ。

このマジカルンナンバーを意識して選択肢の数を調整すれば、消費者が選択する際の負担が軽くなります

例えば、スマホアプリのタブメニューはマジカルナンバーの定番で、どの企業も4つから5つのタブメニューを作っています。

マジカルナンバーに合わせてタブメニューを作ることで、ページを開いてすぐにどのボタンがあるかを記憶でき、アプリをスムーズに操作できるのですね。

マジカルナンバーは1956年にアメリカの心理学者ジョージ・ミラーが提唱し、当初は人間が記憶できる情報量は7±2とされていました。

その後、2001年にアメリカの心理学者ネルソン・コーワンがマジカルナンバー4±1を発表し近年ではこちらが定説となっています。

消費者がモノやコトを選びやすくするためには、マジカルナンバーの3~5を意識することで選択する際のストレスを軽減できますよ。

コツ③カテゴリーを作って分類する

選択肢が多い場合、カテゴリーを作って分類しましょう。

なぜなら、カテゴリーに分けることで選択肢が絞られ、選びやすくなるからです。

例えば、外食チェーン店では消費者のニーズに対応するためにメニューが豊富です。

しかし、メニューを選べることに楽しみがある反面、選択に迷ってしまいます。

そこで役立つのがカテゴリー分けなのですよ。

大手外食チェーン「ガスト」のホームページに掲載されている店内メニューも分かりやすくカテゴリー分けされています。

店内メニューを見てみると、以下のように大きく6つのカテゴリーに分かれており、その後小さなカテゴリーに分かれ、詳しいメニューが見られます。

大きなカテゴリー・おすすめ
・グランド
・ランチ
・モーニング
・お持ち帰り
・宅配
小さなカテゴリー
(「グランド」の例)
・ハンバーグ/ステーキ
・チーズIN/チキン
・和膳/とんかつ
・丼/うどん/鍋
・ライトミール
・から好しのからあげ
・お得なセット/単品ライス

ガストのメニューは約100種類以上あるそうですが、このようにカテゴリーや分類を行うことによって消費者は選択しやすくなるわけですね。

商品やサービスの種類が多い場合には、カテゴリーによる分類を行い、消費者が選択しやすくなる工夫を取り入れましょう。

「決定回避の法則」と「現状維持の法則」の違いとは?

決定回避の法則と類似している心理現象に「現状維持の法則」があります。

決定回避の法則は選択肢が多すぎて選べなくなり、選ぶことをやめてしまう心理現象でした。

一方の現状維持の法則は選択肢が多すぎると、これまで選んできた選択を維持する心理現象のことを言います。

決定回避の法則も現状維持の法則も、選択肢を絞ることがマーケティングで活用する際のポイントとなりますよ。

しかし、選択肢を絞る目的は異なります。

決定回避の法則は選択自体をしてもらうために選択肢を絞るのに対し、現状維持の法則は選んでもらいたい商品やサービスのために選択肢を絞っているのです。

この2つの心理現象はとても似ているので、違いをしっかりと把握しておきましょう。

「現状維持の法則」について、こちらの記事で詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてくださいね。

まとめ

ここまで「決定回避の法則」をマーケティングで活用する方法や事例をご紹介してきました。

最後にこの記事の要点をまとめます。

  • 「決定回避の法則」とは、選択肢が多いことで選択することをやめてしまう心理現象のこと
  • キャッチコピーやフィルター機能、診断など消費者に合った商品の提案をして選択肢を絞ることで「決定回避の法則」を活用できる
  • 「決定回避の法則」をマーケティングで使う際は、マジカルナンバーを意識した提示の仕方やカテゴリーを使って分類することがコツ
  • 「決定回避の法則」をマーケティングに活かすために大事なことは、選択肢が多いことで相手が選ぶことをやめさせないように工夫をすることです。

今回ご紹介した事例やコツを参考に、ぜひマーケティングに活用してくださいね。

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