現状維持の法則とは?決定回避の法則との違いや使い方をわかりやすく解説
- 現状維持の法則って?
- 現状維持の法則と決定回避の法則との違いは?
- 現状維持の法則をマーケティングで活用したい!
ビジネスをするうえで、商品開発や販売促進など考えることが多く、悩みはつきませんよね。
この記事では現状維持の法則について意味や使い方をまとめました。
現状維持の法則はお客様の気持ちを考えるうえで有効な、心理学をもとにしたマーケティング理論の一つです。
消費者がなぜかその商品を買い使い続けてしまう要素を押さえることが、自店の客離れや売り上げの伸び悩みなどの問題の解決の糸口になりますよ。
現状維持の法則について詳しく見ていきましょう。
現状維持の法則をわかりやすく解説
現状維持の法則は行動経済学からきた言葉です。
消費者は多くの選択肢があることで、商品を購入しにくくなっているのですが、その心理には現状維持の法則が大きく関わっていますよ。
現状維持の法則について、例を挙げながらわかりやすく解説していきましょう。
現状維持の法則の意味とは?
行動経済学や心理学では「現状維持の法則」という言葉があります。
現状維持の法則を簡単に説明すると、「人は選択肢が多くなると、いつもと同じものを選んでしまう」という心理効果です。
「現状維持の法則」の用語は、プリンストン大学の行動経済学者であるエルダー・シャフィール博士が提唱した心理学用語です。
日本の大和証券のCM「黒い手帳編」でシャフィール博士自らが出演し、効果について語っていますよ。
日本の大和証券のCMでは違う色の手帳が欲しいと思っている男が、お店で選べる手帳の種類が多いのにもかかわらず、やはり黒い手帳を選んでしまう姿を映しています。
このように多くの選択肢を目の前にするとかえっていつも通りのものを選択するという、一見矛盾とも思える行動は現状維持の法則によるものなのです。
現状維持の法則が起こるメカニズム
現状維持の法則が起こるメカニズムは、人が選択することに多くのエネルギーを消費することにありますよ。
人は多数あるなかから選択する際、新しいものを選んで失敗したくないという心理が働きます。
なので多くの選択肢が用意されたとしても、決定するためのエネルギーが最小限である「今までと同じもの」を選んでしまうのです。
たとえば、コーヒー屋でバリエーションが幅広くそろっているのに、なぜか同じようなものを選ぶことはないでしょうか。
新しい服を買いに行っても、似たような色や形ばかりになることもありますね。
さらに現状維持の法則が起きる原因として一説には、もとを辿ると狩猟時代に群れから離れることが生命の危機だったことからともいわれています。
人類の歴史の中で培ってきた危険を回避するための心理が、現代を生きる私たちの決定に未だ影響していることがわかりますね。
失敗したくない心理や危機回避、選択にエネルギーを使うことから、選択肢が多すぎると同じパターンのものを選んでしまう現状維持の法則が起こるのです。
決定回避の法則とは?現状維持の法則との違いについて
選択肢が多いとき「現状維持の法則」は、いつもと同じものを選んでしまうという法則だと紹介しました。
一方「決定回避の法則」は、選択することをやめてしまいます。
選択に迷うと、お客さまは商品が決められず、買わない決断をしてしまうのです。
つまり商品のバリエーションを増やしたことが、買い控えの状況を作り出しているのです。
決定回避の法則はこちらの記事に詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
現状維持の法則の事例!ビジネスと日常の2つのシーンで紹介
最近は音楽配信や動画配信サービスだけではなく、家具や洋服に至るまで、この現状維持の法則を使ったビジネスが、とても幅広く登場しています。
普段の生活のなかにも、現状維持の法則の事例はありますよ。
ここではビジネスや日常での現状維持の法則の事例を紹介していきますね。
【ビジネス】お得な定期購入
現状維持の法則をうまくビジネスに活かし成功しているのが、通販サイトアマゾンの定期購入のサービスです。
店頭よりも多い商品を扱うネットでは、選ぶことにエネルギーを消費するため購入するまでに時間がかかってしまいますね。
なのでネットショップでは、選択肢が多くていつも同じ商品を買うという「現状維持の法則」が起きやすくなっていますよ。
ネットショップの定期購読では結局同じものを購入する心理を利用して、お客さまの選ぶストレスを軽減し、商品を購入しやすくしているのです。
【ビジネス】サブスクの無料お試し期間
定額でサービスが受けられるサブスクリプション(サブスク)サービスも、現状維持の法則をとても有効に使ったマーケティング手法です。
サブスクのサービスで一般的なのは、動画や、音楽、漫画などの配信サービスですね。
サブスクは「初月無料」「3ヶ月お試し」など、期間を設けてお試しできるサービスを設けて加入のハードルを下げています。
これまで1か月に1回も映画をレンタルしなかった人でも、最初の1か月無料でいくつも観られるとなると、加入しやすいですよね。
加入をすると、トラブルや解約の大きな理由がない限り現状維持の法則が働くので、有料の申込みや成約につながるのです。
さらに一度加入すると、サービスを利用しない月があっても退会することを面倒に感じ、そのまま利用し続けてしまいます。
他にも「airCloset」はお客様の体形や好みなどのデータをもとにスタイリストが服を選んで、定額で数種類の洋服を届けてくれるサブスクリプションサービスです。
「多くの洋服があるなかで迷ってしまう」「結局いつも同じような洋服を選んでしまう」といった現状維持の法則からくる悩みを上手く利用していますね。
現状維持の法則は多くの選択肢があると、定番のものを選ぶという特徴があります。
サブスクリプションサービスは1か月サービスを使うことで商品に愛着がわいたり、自分にとって必要なサービスとして定着し始めるので、現状維持の法則を効果的に活用している事例ですね。
【日常生活】外食で同じメニューを頼む
日常生活でも、現状維持の法則はよく見られます。
たとえば外食でレストランに行ったとき、数十種類のメニューが並んでいても結局いつもと同じようなメニューを選んでしまうのは現状維持の法則ですね。
喫茶店に行っても、多くの種類があるにもかかわらず、「とりあえずコーヒー」と頼む人が多いですよね。
逆に、毎回違うものを選んだり、サービスを頻繁に変えたりする人は少ないでしょう。
現状維持の法則は、日々の人の活動のあらゆる場面に浸透している心理です。
大多数の人が陥るこの傾向を知ることで、効果的なアプローチが可能になってきます。
【ポイントは3つ】マーケティングにおける現状維持の法則の使い方
現状維持の法則の心理は、多くの人に日常的によく見られる心理です。
マーケティング手法として使う際、実際に何を行うかポイントを押さえてみましょう。
その際のポイントは3つあります。ポイント別に説明していきましょう。
ポイント①試供品やサンプルを配布する
試供品やサンプルを使ってもらうことで現状維持の法則が働き、そのまま同じものを購入してもらう仕組み作りができます。
たとえばTVCMなどでも「1ヶ月無料 お試し期間」や「商品に納得がいかない場合、返品無料」などの方法がありますね。
お客様にとって商品やサービスを購入するのかしないのかを決定するのは、エネルギーを消費することです。
なので決定がストレスにならないように、商品のお試しのための入口をできるだけ簡単にしましょう。
- 電話で申し込むだけ
- 雑誌に付いているハガキを出すだけ
- ネットでワンクリックするだけ
このように、手軽さや簡単さをアピールするのがおすすめです。
サンプルや試供品の配布は「一度使ったことがあるから」「解約が面倒だから」といった現状維持の法則の心理に効果的に働きかけます。
ポイント②選択肢を絞る
現状維持の法則を使う際は選択肢を絞ることで、選ぶときのお客様の負担を減らしましょう。
なぜならお客さまにとって、多くの選択肢の中から商品を選ぶことはストレスだからです。
例えば店長に「おすすめは何ですか?」と聞いて、「どれもおすすめです」と返されたら、選択に困ってしまいますよね。
なので選ぶ基準がないお客様に対して、迷わない工夫として3つほど候補を挙げることをおすすめします。
たとえば以下のような候補がありますよ。
- セットメニュー
- 店長のいち押し商品
- 人気の契約タイプ 1~3位
このように現状維持の法則を活用するときは選択肢を絞ることで、お客さまが簡単に選べるようにしておきましょう。
ポイント③シンプルで分かりやすくする
現状維持の法則では内容をシンプルにすることも大切です。
いくら選択肢が少なくても、お客様はひとつひとつのボリュームが大きい場合はやはり負担に感じます。
たとえばラーメン屋でセットメニューが、以下のように設定されていたらどうでしょうか。
Aランチ:お好きなものを選んでください
- 中華麺(ごま・塩・醤油)
- 小鉢(煮物・菜物・酢の物)
- サラダ(胡麻・シーザーサラダ・和風・洋風)
- 本日のデザート(杏仁豆腐・プリン・あんみつ)
- 飲み物(以下の10種類からお選びください)
商品に複雑な印象を与えてしまいますし、「一つ一つ選ぶ必要があって大変だからやめておこう」となりますね。
現状維持の法則を活用するときはメニューやサービスの商品のバリエーションを少なくし、内容もシンプルで分かりやすくしてみましょう。
お客様の選ぶ際の負担が減り、注文を控えることがなく選びやすくなりますよ。
新たな選択をしてもらうには?現状維持の法則を回避する方法
現状維持の法則を伝えてきましたが、現状維持だけでは発展がないため、現状維持の法則から回避するアプローチも大切です。
その際、伝える際のポイントは3つあります。
- 現状維持のままでいることのリスクを伝える
- 変化を感じさせず他社から移行する
- 変化するメリットを2倍以上伝える
たとえば携帯電話の業界は現状維持の法則を回避するために、新しい携帯に変えても携帯番号がそのままでよかったり、手数料無料キャンペーンなどを行ったりしています。
他にも昔の携帯を使い続けるリスクを伝え、スマートフォンへの乗り換え手続きやLINEアカウント移行のお手伝いサービスを展開していますね。
商品やサービスを変えるのは、どのお客様にとってもエネルギーを使うことです。
現状維持の法則を回避するにはお客様が変化することで生活がどう良くなっていくのか、わかりやすく明示しましょう。
まとめ
さまざまな例を挙げながら現状維持の法則を紹介してきました。
最後に紹介していた要点をまとめてみましょう。
- 現状維持の法則とは「人は選択肢が多くなると、いつもと同じものを選んでしまう」という心理効果
- 現状維持の法則は多くの人にみられる傾向のため、大人数へのアプローチが可能
- 現状維持の法則を使う際はサンプルを配布したり、選択肢を少なくしたり、内容をシンプルにする
- 現状維持だけでは発展がないため、現状維持の法則から回避するアプローチも大切
現状維持の法則は多くの人に見られる傾向のため、マーケティングでも効果的な活用が期待できます。
現状維持の法則を使ったマーケティング手法も参考にして、商品やサービスなどを見直して活用してくださいね。