成功事例から学ぶLTVの伸ばし方!計算方法から具体的な施策まで紹介
- LTVとは?
- LTVの求め方・計算式は?
- どうすればLTVは伸ばせるの?
最近では、新規顧客獲得にコストをかけるより既存の顧客を大切にして利益を得ようと考える企業が増えています。
そのため、既存顧客との関係性を強くするために、多くの企業がLTVを重要視するようになりました。
この記事では、LTVについての詳しい説明やLTVの計算方法、具体的な施策を紹介していきます。
企業のLTVの施策成功事例も紹介するので、利益を最大化するために参考にしてください。
LTV(顧客生涯価値)とは?
LTV(Life Time Value)は、顧客生涯価値と訳されます。
LTVとは、顧客が企業にどれくらいの利益をもたらすかを示す数値のことです。
ひとりの顧客と自社の取引開始から終了までの間に、自社がこの顧客から得られた利益を表します。
たとえば、1回だけの取引より繰り返し2回3回と利用してもらえた方が、LTVは高くなりますよ。
つまりLTVが高いことは顧客からの信頼を得ているということで、LTVが低い場合は現状を見直して、改善する必要があるのです。
「CAC」「CPA」と「LTV」との関係性
「CAC」「CPA」どちらも顧客獲得単価という意味で、LTVの要素として計算に含まれることもあります。
CACは顧客を一人獲得するためにかかった「総コスト」のことで、計算式は「顧客獲得総コスト÷新規顧客獲得数」です。
CPAは顧客を一人獲得するためにかかった「広告コスト」のことで、「かかった広告費÷顧客獲得数」と計算します。
CAC・CPAの数値の把握はLTVにおいても大切ですよ。
なぜなら、LTVばかりを重視していると利益を上げることばかりに気を取られ、どれだけのコストがかかるのかを見失うことがあるからです。
LTVよりCACの数値が高いと顧客からの利益よりコストの方が多いということなので、事業が厳しい状況にあることが分かります。
LTVの数値が高いから利益が出ているとは限らないので、CAC・CPAの数値をしっかり見ていくことが大事です。
CAC・CPAの他にもCPO・POASといったマーケティング用語があるので、こちらの記事で詳しく紹介します。
LTVがマーケティングで重要な理由
LTVは事業の利益を上げ続けるために大切なものです。
LTVの数値から顧客満足度が分かったり利益の確保にもつながり、マーケティングでも重要と考えられています。
なぜLTVがマーケティングで重要なのか、理由を詳しく説明しますね。
理由①新規顧客の開拓が難しくなっているから
近年、人口の減少などで新規顧客の開拓が難しくなっています。
開拓をしたくてもすぐに効果が出る訳ではなく営業コストも高くなり、なかなか利益には結び付きません。
なので、利益を確保するためにはリピーターの獲得は必須です。
新規顧客が見込めない分、既存顧客のリピートで補う必要がありますよ。
リピーターになってくれたお客さまと良好な関係が築ければ「この商品・サービスならこの会社」というイメージがつきます。
結果的にブランド力の向上にもつながりLTVも上がりますよ。
顧客との信頼関係が確立できていれば、長く購入してくれたり知り合いに紹介してくれる期待も持てます。
新規顧客獲得にもつながる可能性もありますね。
リピーター戦略について、こちらの記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
理由②サブスク商品が増えたから
商品やサービスを一度で購入せずに、月額定額制で利用する「サブスク商品」を扱う企業・利用者も増加しています。
サブスク商品は、契約できれば継続的な収入が得られるのがメリットです。
ですが、顧客が満足できないと簡単に乗り換えられてしまうリスクがあります。
なので、サブスク商品では顧客に対して不満を持たれることなく、長期的・継続的な利用を促すことが大事です。
そのため、LTVを利益確保のための施策の指標にすることが重要になります。
ビジネスタイプ別!代表的なLTVの計算式
LTVの計算には複数の計算式が存在します。
たくさんの企業があるなかでビジネスの内容にも違いがあるように、そのビジネスに合った要素を踏まえたさまざまな計算式がありますよ。
ここでは、扱う商品の種別ごとに代表的なLTVの計算式を紹介するので見ていきましょう。
計算式①リピート商品
- リピート商品のLTV計算式=平均購入単価×平均購入回数
リピート商品ではこの計算式を基本としますが、この式に平均契約期間(年数)を掛け合わせて計算するケースが多いです。
小売商品の数字を当てはめてみると、購入単価5,000円×購入回数年3回×契約期間3年=45,000円がLTVですね。
お客さまが気に入って3年間購入してくれたら、45,000円の売上の可能性があることが分かります。
計算式はそのビジネスに合った要素を加味するため、ひとつだけではありません。
たとえば、リピート商品では利益率の乗算で利益ベースとなり、コストを差し引くとコストを加味した数値を求めることができます。
その場合の計算式を以下に記載しておきますね。
- 利益ベースのLTV=平均購入単価×平均購入回数×平均契約期間×利益率
- コストを加味したLTV=平均購入単価×平均購入回数×平均契約期間×利益率-顧客獲得にかかったコスト
計算式②BtoB商品
- BtoB商品のLTV計算式=年間取引額×継続年数×収益率
BtoB商品のように契約が長期間になるものにはこの計算式が最適です。
長期間契約では、年間の取引額だけでは良い取引かどうかの判断がつきづらいので、LTVで表すことが大事ですよ。
たとえば、取引Aは年間150万円の取引を2年続けていて収益率が50%、取引Bは年間120万円の取引を2年続けていて収益率が70%と仮定して計算してみましょう。
- 1,500,000円×2年×50%=1,500,000円/取引AのLTV150万円
- 1,200,000円×2年×70%=1,680,000円/取引BのLTV168万円
取引Bの方がLTVが高くなりました。
このように、年間取引額が多い方が必ずしも良い取引ではないことが分かります。
この計算式は、収益率を先に計算しておく必要はありますが、保険商品などにも活用できますよ。
計算式③サブスク商品
- サブスク商品LTV計算式=平均購入単価÷チャーンレート(解約率)
チャーンレートは、ひと月の解約した顧客数をひと月の顧客全体数で割ると出てくる数字です。
サブスク商品は月額定額制で利益が分かりやすいですが、解約される可能性があるため解約率を加味することがポイントです。
たとえばTV・動画サービスでは、チャーンレートの相場は10%と言われています。
月額契約1,500円とすると、1,500円÷10%=15,000円になりますよ。
利益ベースのLTVを出すときは、以下の計算式で数値を求めてください。
- 利益ベースのサブスク商品LTV=平均購入単価×粗利率÷チャーンレート
LTVを伸ばして利益を最大化させる4つの方法
LTVは、顧客に普段よりも高いもの/顧客が「言われてみるとこれも必要だな」と思うものを、購入してもらうだけでも数値が上がります。
集客手段を工夫したり長期間の契約もLTVに影響しますよ。
顧客のニーズに応えることも大事です。
ここからは、LTVを伸ばして利益を最大化させる4つの方法を詳しく紹介します。
方法①購入単価を上げる
LTVを伸ばすためには、顧客ごとの購入単価を上げることが大事です。
アップセル・クロスセルで購入単価を上げていきましょう。
アップセルとは、顧客がいつも購入するものや購入したいものよりも、高価なものを提案して購入してもらう営業です。
たとえば「とりあえず安いブラックフォーマルで良い」と訪れた店で、店員の説明を受け思ったより高価なものを買った、という経験がある人もいますよね。
この店員の行動がアップセルです。
クロスセルとは、顧客がいつも購入するものや購入したいものに関連したものを提案して、両方一緒に購入してもらう営業を言います。
ブラックフォーマルと一緒にネクタイや念珠などの小物を勧められ購入した場合、クロスセルも成功ということです。
アップセル・クロスセルのどちらも、お客さまに有益な情報の提案であると理解されることが大事なので、押し付けせずに丁寧な対応を心がけましょう。
顧客単価を上げる方法について、こちらの記事に接客ポイントなどをまとめています。
方法②集客コストを削減する
集客にコストをかけすぎると利益が減りLTVも低くなるので、集客コストの削減が必要です。
ですが、コストを抑えるためにマーケティングや営業・宣伝を怠ると、思うような集客ができず逆効果になります。
なので、コストを抑える手段としてUGCの活用が有効です。
UGCとは、一般の人が自分で作って発信するコンテンツで、個人のSNSの投稿やブログなどを指します。
商品を購入してくれたお客さまが自身のSNSで紹介してくれたり、有名な人の投稿に商品が映り込んでいるだけで注目されることもありますよ。
食事のレビューや商品購入のレビュー、口コミサイト投稿などもUGCです。
実際に体験した人の感想はリアルな声として共感されやすく、良い感想が多いほど購入につながります。
質の高い商品・サービスの提供が前提ですが、UGCに広告宣伝の手助けをしてもらうとコストを抑えることが可能です。
方法③購入期間を伸長する
利益を増やすためには、1度でも利用してくれたお客さまにリピートしてもらうことが必要です。
初回の購入から半年後/1年後という区切りで訴求することもリピートにつながります。
携帯通信会社を見てみると、どの会社もそれぞれに長期契約者には通信料を毎月割引していますよ。
契約更新時にはポイントをプレゼントするという特典をつけて、顧客を引き留める努力をしています。
このように、年間契約や長期契約に割引や特典をつけたり、契約の更新を促すことも大事です。
また、契約更新時期なのに更新を迷う人もいるのでしっかりフォローしましょう。
金額面で更新をためらう人には、単価は下がりますが価格の安い商品を提案するダウンセルをして、契約の継続をしてもらうことをおすすめします。
解約されたら終わりですが、価格を下げることで契約が伸びる期待が持てますよ。
方法④顧客目線で考える
LTVを伸ばし利益を上げるためには具体的な施策は大事です。
ですが、顧客に目を向けず会社側の都合で考えた施策ではLTVを上げることはできません。
自社が売りたいものを売るのではなく、顧客が欲しいもの・受けたいサービスを提供しなければ誰にも選ばれませんよ。
一番優先することは顧客目線の徹底です。
購入してもらえた商品やサービスにお客さまが満足してくれたら、信頼につながり関係を強化することもできます。
そうすることで「〇〇ならA社」と、ブランド力も高まりますよ。
ユーザー目線について、こちらの記事に詳しくまとめたのでぜひご覧ください。
LTVを活かしてマーケティングに成功した企業の事例
LTVを活かすには、自社ならではの商品やサービスの提供も必要です。
これから紹介する企業では、顧客ニーズに応えたり利用して欲しい人を絞ることでLTVを増やしています。
企業の都合ばかりでなく、お客さまの視点で考えることも大事にしていますよ。
詳しく紹介するので参考にご覧ください。
事例①ビールをサブスク化した「キリン ホームタップ」
「キリンホームタップ」は、お客さまが選んだビールをお客さまのタイミングで毎月2回定期的に届ける、というキリンビールのサブスク商品です。
顧客の「新鮮でおいしいビールが飲みたい」「いつもと違う味のビールも試したい」というニーズに応えるために工夫されたサービスになっています。
工場で作りたてのビールが自宅に直接届き新鮮なビールを味わえることや、限定品を飲める特別感があり、どちらも会員にならないと体験できません。
また、定期的に届く便利さもお客さまに支持される一因です。
ビールサーバーの供給が間に合わないほどファンがついて、収益を安定化させています。
事例②ターゲットを絞り込んだ「一休.com」
「一休.com」は、高級志向の方に向けた宿泊施設やレストラン、ギフトチケットなどのWeb予約システムです。
「特別な日だから贅沢したい」「ゆとりがあるから高級レストランがいいな」などと考える人に、質の高いホテルやレストランの紹介をしています。
一休.comがターゲットにしているお客さまは、再度利用するときも同等あるいはそれ以上の価格を選ぶことが多いので、LTVが高くなることが予想できますよ。
「こころに贅沢させよう」というコンセプトでターゲットを絞り、自社のブランディングにも成功しています。
事例③顧客目線を徹底した「カゴメ」
「自然を、おいしく、楽しく」をコンセプトにしたカゴメは、常にお客さまの健康を考えた商品作りをしています。
ですが、通販部門では成果が上がらず、良い商品を作っても対応が悪ければ購入してもらえないことに気づきました。
そこで、コールセンターでの顧客対応を向上させ、お客さまひとりひとりの目線で提案やアドバイスをすることで成果を上げています。
お客さまと向き合うことに徹してLTV向上に成功した事例です。
まとめ
この記事ではLTVの伸ばし方を紹介しました。
最後に簡単にまとめます。
- LTVとは顧客生涯価値のことで一人の顧客が企業にもたらした利益を示す数値
- 実質の利益の有無はCAC・CPA(顧客獲得単価)とLTVの数値で判断する
- 新規顧客の獲得が難しく既存顧客との関係を築くためにLTVは重要
- サブスク商品の増加に対応した利益確保のためにLTVは重要
- LTVの計算にはリピート商品/BtoB商品/サブスク商品、それぞれのビジネスタイプ別の式がある
- LTVを伸ばすには購入単価を上げることやUGCの活用で宣伝費を抑える
- 長期契約や顧客目線の考え方もLTVを伸ばすことにつながる
LTVでは、顧客との関係性を強くすることで、数値を向上させ利益を最大化することができます。
この記事で紹介した計算式でLTVの数値を出して、事業を成功に導いてください。