なぜ人手不足なのに人件費削減をするのか?人件費削減の目的や方法を紹介
- 経費を削減したいけど何から取り組めばいいかわからない
- 人件費を削減してその分新しい事業に投資がしたい!
- 人件費削減で従業員に嫌な顔されたくない・・・
人件費は売り上げに対し経費の中でも高い割合を占めます。
人件費を削減すれば、経営改善や売り上げアップの期待が高まるでしょう。
しかし「人件費削減」は、経営者にとっては人手不足というリスクを背負うことになりますし、従業員にとっては耳の痛い言葉でもありますよね。
そのため、人件費の内容や具体的な削減の方法を知り、削減に向けては慎重に取り組む必要があると言えます。
この記事では、段階的に人件費を削減する方法とともに、業務を最適化する方法を紹介しています。
ぜひ最後までお読みいただき、あなたの会社のさらなる成長や発展のヒントを得てくださいね。
人件費とは?人件費の意味と含まれる内容
人件費とは、人にかかわる費用全般のことを言い、以下のように分類されます。
従業員への賞与や給与 | 従業員に定期的に支払われる基本給や、 企業の業績や個人の成果に対して支給されるボーナスや一時金 |
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各種手当 | 残業や休日出勤、家賃手当や交通費などの一部の条件や業務に応じて支給される追加の給与 |
社員教育費 | 従業員のキャリアアップのためにおこなう教育や研修にかかる費用 |
人材採用費 | 従業員を雇用する際に発生する費用・採用担当者の人件費(内部コスト)と、人材紹介会社に支払う費用や求人広告費(外部コスト)に分類される |
福利厚生費 | 従業員全員を対象とした、通常の給与にプラスして支払う業務に直接関係しない費用・「出張手当」「慶弔見舞金」「健康診断」など企業が独自に定めている |
法定福利費 | 会社の負担が法律で義務付けられている費用・「社会保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」「雇用保険料」「労災保険料」「子ども・子育て拠出金」の6つを言う |
人件費は会社にとって、経費の中でも多くの比重を占め、経営状態に影響する経費ですね。
法律で定められている「法定福利費」は一定金額の支出が絶対条件ですが、それ以外の費用について見直し、効果的に削減をおこなうことで、事業の発展や、経営改善につなげていくことが大切です。
なぜ人件費を削減するの?人件費を削減する3つの目的
冒頭にもあるように、人件費は経費の中でも大きな割合を占める支出です。
これから、人件費を削減する目的を具体的に3つ紹介していきます。
人件費をコントロールすることで、会社の経費を管理し、効果的な運用を心がけましょう。
目的①経営状態を改善するため
人件費を削減する目的のひとつが、人件費に付随する経費を削減することです。
たとえば業務内容を見直し残業をなくせば、従業員の残業代や、時間外の会社の水道・光熱費が削減できます。
ただし、人件費削減にはリスクも伴います。
極端ではありますが、業務量が変わらないにも関わらず社員やパートの人数だけが減れば、残業代がかさんだり、離職につながったりしますよね。
業務効率化を図り、適切にコストカットすることで、人件費削減による経営状態の改善が見込めるでしょう。
目的②浮いた資金をほかに回すため
人件費削減で浮いた経費は、会社の設備投資や社員教育、事業拡大のための資金に回すことにより、売り上げを向上させたり、ビジネスの成長につなげたりできます。
たとえば、残業をなくし浮いた人件費を社員教育に回し、一人一人のパフォーマンスが向上することで、新たな事業に挑戦できるなどの好循環が生まれるのです。
単に浮いた経費を利益として計上するだけでなく、効果的に運用することも会社の成長にとって、重要な要素になりますね。
目的③金融機関からの評価を良くするため
経費削減をすることで経営が黒字になれば、金融機関からの信頼も厚くなり、融資も受けやすくなります。
最近では自己資金ゼロでも条件付きといった形で融資がおこなわれる場合もありますが、本来融資は自己資金がないと受けられないものです。
普段から「利益を生み出せる会社」であると金融機関に認識してもらい、信頼を得ることで新しい事業へも積極的に挑戦できるようになるでしょう。
人件費などの経費が売り上げに対しどの程度の割合を占めるかを日ごろから評価した上で、積極的に削減し、安定した黒字経営を目指していきたいですね。
人件費を削減する方法5つ
人件費を削減することで、こつこつ販売数を上げるよりも簡単に利益を確保することができます。
しかし、「人件費削減」という言葉は、従業員にとってはマイナスにとらえやすい注意が必要な言葉です。
従業員のモチベーションや会社の生産性を損なわない適切な方法を選択し、経営に役立てましょう。
ここからは、人件費削減の具体的な方法を5つご紹介していきますね。
方法①ITを取り入れて業務効率化を図る
IT化とは、業務をシステム化し、これまでの作業にデジタルツールを取り入れることで、作業を効率化させ、業務をスムーズに取り組めるようにすることです。
たとえば、飲食店で店員が手書きで注文をとりながら伝票を作成していたのを、各テーブルごとにタッチパネルで注文ができるようにした場合を考えてみましょう。
タッチパネルを導入することで、注文を取りに行くという業務が削減され、従業員も調理や準備に専念できるようになりますよね。
お客さんも、オーダーが早く通り、待ち時間が短縮されます。
人手や時間のかかる作業をIT化できると、場合によっては従業員の削減も可能ですよ。
しかし、各テーブルにタッチパネルを導入するには、端末代、通信環境の整備など、数十万円~数百万円の費用が必要です。
また、操作方法など従業員への教育もあるため、定着するまでの労力も必要であることは十分理解しておきましょう。
稼働するまでに初期費用や時間はかかりますが、作業の効率が上がることで、長期的な人件費の削減には効果的な方法といえます。
方法②外注化する
一部の業務を社外に発注する外注によって、社員に本来の業務に集中してもらい効率化を図ることで、人件費を削減できます。
外注は、単純作業を依頼する「外部注文」と、専門性の高い業務を委託する「アウトソーシング」の2種類を使い分ける必要があります。
外部注文では、人件費削減を目的にデータ入力や簡単な電話業務、リサーチ作業などある程度マニュアル化された業務を外部に発注する方法です。
自社の人材では割に合わない作業を外部に委託できれば、その業務のコストをカットし、社員は本来の業務に集中できますね。
一方、アウトソーシングでは、例えば飲食店がネット通販を始めたい場合、開発から運用まで委託することで早い成果を得られ、人件費を削減できます。
専門的な知識を持つ人材を一から採用、育成するには膨大な時間と人件費がかかるため、専門性の高い分野においてのアウトソーシングは、人件費削減には良い手段といえるでしょう。
外注をうまく利用し、本来のコア業務を強化しながら、人件費削減を実現しましょう。
外注化について、詳しくはこちらの記事にまとめているので、あわせてご覧ください。
方法③労働生産性の向上を図る
労働生産性とは、働き手一人当たりがどれくらいの利益を生み出せるかを示したものです。
たとえば2時間という制限の中で100個のコロッケを作る場合、料理初心者4人で作るより、熟練した食年3人で作った方が、一人当たりの生産性が高いと言えますよね。
このように、より少ない労働量で生産量を伸ばすことが生産性の向上につながります。
従業員の生産性が高いことで余分な人件費が削減され、利益アップも見込めるわけですね。
生産性が上がると残業がなくなり、給料も上がれば従業員の満足度も上がり、より良いサービスの提供や、業務への理解が得られやすくなるでしょう。
しかし、生産性を上げるという事は、効率を追求していく作業になるために、効率を追求し過ぎるあまり、従業員を追い詰める場合があるので注意が必要です。
限られた人数や時間の作業では、一人ひとりの負担が増え、期限に間に合わなかったり、質の低下してしまったりするリスクもあるからです。
削減可能な業務、不可能な業務をしっかり見極め、品質を保ちつつ人件費をコントロールすることを意識して取り組みましょう。
また、生産性を上げるための方法として「分業化」があります。
分業化とは、生産や販売において各工程を分割して、それぞれ異なる人が担当するシステムを言います。
労働生産性を上げることは、中長期的に人件費を削減する有効な手段となるでしょう。
分業化については、こちらの記事に詳しくまとめていますので、参考にしてくださいね。
方法④給与や賞与をカットする
現在決まって支出されている給与や賞与をカットすれば、人員を整理することなく人件費の削減が実行できるため、経営側からすれば手っ取り早い手段です。
個人の年収が操作できれば、それに付随する法定福利費も削減され、経費全体に与える影響は大きなものになるでしょう。
しかし、当然のことながら従業員のモチベーションは低下し、最悪の場合離職となるケースも想定しておく必要があります。
また、従業員のみならず、金融機関から業績不振に陥っていると判断され、融資を受けられなくなるリスクも考えられます。
昨今の不況によって、給与や賞与のカットは、会社の評判にも影響するため、短期間に一時的に人件費がカットできたとしても、長期的な経営のダメージは避けられません。
あくまで最終手段としてとらえ、効率化や売り上げのアップに努めるよう心がけましょう。
方法⑤人員整理を行う
リストラや希望退職をつのったり、新卒採用や中途採用を見送ったり、従業員の数を減らすことで人件費は削減できます。
こちらも給与カットと同様に一時的な人件費の削減はできますが、企業イメージの悪化や優秀な人材の流出が予想されます。
在籍する社員のモチベーションにもかかわるため、長期的な経営へのダメージは想像以上であるという覚悟が必要です。
また、人員削減は労働法や労働契約にのっとり、社会的責任を考慮する必要があることも十分理解し、慎重にならなければなりません。
給与カットも最終手段だと言いましたが、人員削減はそれでも経営が立ちいかなくなった場合の、本当の意味での最終手段と言えるでしょう。
人件費削減で失敗しないためのコツ
冒頭で申し上げた通り、「人件費削減」は従業員にとっては、ナーバスな言葉であることを理解したうえで施策をすすめましょう。
経営側は売り上げに対し、どの項目でどれだけの費用がかかっているかを十分理解し、常に評価し続けることで、カットできる余分な業務や経費について考え続ける必要があります。
基本は人件費以外のところで経費を削減しながら、従業員が効率的に作業ができるプロセスを整えていくことに力を注ぎましょう。
ここで力を発揮するのが、業務の外注化や分業化です。
段階的な施策により効率化に成功することで、従業員への理解も得られやすくなり、混乱を防ぐことができます。
従業員の理解と協力により、給与や賞与などのカットという従業員にとっても会社にとってもマイナスな手段を取らずに人件費削減の成功を目指しましょう。
まとめ
今回の内容をまとめると、次のようになります。
- 人件費とは、人にかかわる費用全般のこと
- 法律で定めのある「法定福利費」以外の人件費は削減の対象となる
- 人件費を削減すれば、それに付随する他の経費の削減もできる
- 人件費削減で利益が向上すれば、金融機関からの融資も受けやすくなり、ビジネスの成長へと充てることができる
- 人件費を削減するには、「ITの活用」「外注の利用」「分業化」で業務の効率化を追求する
- 給与カットや人員整理は経営が立ち行かなくなった場合の最終手段
人件費削減のポイントは、まずは人件費以外の経費から見直し、従業員の理解を得ながら段階的におこなうことです。
人件費削減の本来の目的は、仕事の効率を見直し、人件費を最適化することにあります。
そのために、まずは業務を正しく評価し、段階的に効率化に取り組むことで、人手不足に悩むことなく、最大限の利益が得られるようになるでしょう。
人件費の削減でお悩みの方は、今回の内容をぜひ参考にしてみてくださいね。