安定するビジネスモデルの作り方とは?成功事例と失敗事例で考える
- ビジネスモデルとは?
- ビジネスモデルの作り方を教えて!
- 安定したビジネスモデル作りのポイントは?
成功している企業のほとんどが新規事業を立ち上げるときはビジネスモデルを使い、企業内で考え方を共有しながら事業運営に活かしています。
では、自社にあったビジネスモデルを構築するにはどうしたら良いのでしょうか。
この記事ではビジネスモデルの種類や具体例、企業が活用した成功例や失敗例も紹介します。
「ビジネスモデル作りは難しい」「やり方が分からない」と悩む方は、ぜひ参考にしてください。
ビジネスモデルとは?
ビジネスモデルとは、事業を行う上で「誰に何を提供してどうやって収入を得るのか」という仕組みのことです。
利益を生み出しビジネスを安定させるための設計図でもあります。
ビジネスモデルは、競争の激化や材料の高騰などの環境の変化にも対応できますよ。
ビジネスモデルは利益獲得の仕組みなので、作るときに競合他社のリサーチも必要です。さらには、作っていく段階で自社事業の問題個所も見えてきます。
なので事業の全体像が把握できて理解を深めることにつながるのが、ビジネスモデル活用のメリットです。
主なビジネスモデルの種類
主流のビジネスモデルを表にまとめました。
広告モデル | 自社所有、運営する媒体に他社製品の広告を載せ広告収入を得る方式 | 例)ネットメディア/TVCM/新聞広告 |
---|---|---|
販売モデル | 自社で材料や部品を加工し製造した商品を販売する方式 | 例)農家/飲食店/製造メーカー |
小売モデル | メーカーから商品を仕入れ顧客に販売する方式 | 例)コンビニ/スーパーマーケット |
サブスクモデル | 商品やサービスの使用権利を顧客に定額で利用できるように提供する方式 | 例)動画視聴サイト/ストレージサービス |
レンタルモデル | 商品やサービスをレンタルして料金を受け取る方式 | 例)本、DVDレンタル/レンタカー |
フリーミアムモデル | 無料で機能制限のある商品やサービスを提供し、もっと機能を使いたい顧客には有料の会員登録/課金での制限解除をすすめて利益を得る方式 | 例)ニュースサイト/ソフトウエア |
ライセンスモデル | 自社が開発したものの使用権を提供してライセンス料を得る方式 | 例)楽曲提供/ソフトウエア/キャラクターの使用権利 |
マッチングモデル | 一人の顧客が持っているニーズに応えられる商品やサービスを持っている企業や店舗と、その顧客をマッチングさせて利益を得る方式 | 例)人材紹介/不動産仲介/旅行代理店 |
エージェンシーモデル | 自社の持つ専門知識を活用して他社の業務を代行して利益を得る方式、スキルを売ること | 例)デザイン会社/営業代行会社/システム開発会社 |
消耗品モデル | メンテナンスが必要な商品を販売し、メンテナンス品や部品ほか消耗品を売ることで利益を出す方式 | 例)プリンター/浄水ポット |
ビジネスの形態にはそれぞれ違いはありますが、どの事業にも当てはまるビジネスモデルがあります。
自社の扱う商品・サービスの特徴から、同じ業界で使われているビジネスモデルを知ることができるので参考にしてみてください。
フレームワークも紹介!5ステップでできるビジネスモデルの作り方
自社の事業に合うビジネスモデルを作るには、競合他社を参考にすることが大事です。
豊富なアイデアを持っていたり、フレームワークを活用すると作業がしやすくなります。
ここからは、5ステップでできるビジネスモデルの作り方を見ていきましょう。
- ステップ①参入する業界のビジネスモデルを分析する
- ステップ②思いつくアイデアをすべて書き出す
- ステップ③アイデアを絞り込みブラッシュアップする
- ステップ④実現性のあるアイデアをビジネスとして選ぶ
- ステップ⑤ビジネスモデルキャンバスを使って組み立てる
ステップ①参入する業界のビジネスモデルを分析する
最初に自社が参入する業界をリサーチして、使っているビジネスモデルの種類や採用の理由を分析しましょう。
多くの企業に採用されているビジネスモデルの分析結果からは、業界の性質やそのビジネスモデルを使うメリットを知ることができます。
成功している競合他社がどのようなビジネスモデルで成果を上げたのか、なぜそのビジネスモデルにしたのかを分析することは重要です。
分析結果で分かった業界全体の特性が、自社のビジネスモデル作りに大切な要素になります。
マーケティング環境の分析に使う3C分析については、こちらの記事で解説しているのでご覧ください。
ステップ②思いつくアイデアをすべて書き出す
次のステップは、どんなアイデアが収益化できるのかを書き出すことです。できるだけ多くのアイデアを出しましょう。
どんなアイデアでもたくさんある方が良いので、思いついたことは全て書き出すのがポイントです。
そして、そのなかから適したものを選んでいく方が、より良いアイデアを残すことができます。
アイデアがなかなか浮かばないときは、実際に成功した事例からヒントを得るのもひとつの方法です。
また、先程紹介した主に使われているビジネスモデルを組み合わせてみることも、新しいアイデアの発見につながりますよ。
ステップ③アイデアを絞り込みブラッシュアップする
アイデアが出つくしたら、今度は必要なアイデアを選ぶ作業です。
顧客のニーズを基に、高い付加価値を提供できそうなアイデアを絞り込みます。
アイディアを絞り込む際は、自社視点にならないように注意しましょう。
商品の特徴やウリから考えられた自社視点だと、顧客ニーズとのズレが生じてしまうからです。
ニーズとウォンツ、顧客視点を意識してアイデアを絞り込んでください。
絞り込んだアイデアはまだビジネスモデルとは言えないので、内容のブラッシュアップが必要です。
マーケットや競合他社の様子から、自社の強みであるUSPを見つけ出してアイデアを具体的なビジネスへ落とし込みましょう。
USPの見つけ方など、詳しくはこちらの記事にまとめているのでチェックしてください。
ステップ④実現性のあるアイデアをビジネスとして選ぶ
ここまでのステップで素晴らしいアイデアができたとしても、それが実現できないものなら意味がありません。
今度は確実に実現できるビジネスプランを選んでいきましょう。
資金は充分にあるのか、技術が伴うのかなどを考えていくと、実行不可能なアイデアもあります。
業界によってはコンプライアンスの問題で実現できないケースもありますよ。
なので、資金面/技術面/コンプライアンスなどの観点から、現実味のあるビジネスプランを選ぶことが重要です。
ステップ⑤「ビジネスモデルキャンバス」を使って組み立てる
最後はビジネスモデルキャンバスを使って、ビジネスモデルを組み立てていきます。
ビジネスモデルキャンバスの9つの要素について表にまとめました。
顧客セグメント | 価値を提供するターゲットであるペルソナ・メイン以外のニッチなペルソナ |
---|---|
価値提供 | 顧客に提供する価値・顧客に提供する顧客ニーズを満たす商品やサービス |
チャネル | 顧客に価値を届けるためのチャネル・提供ルート/販売、流通チャネル/アフターフォローなど |
顧客との関係 | 顧客とどんな関係が築けるか・対面/オンライン/電話などの手段 |
収益の流れ | 顧客が何にお金を払うのか・支払い形式はどんなものか |
リソース | 顧客に価値を提供するために必要なリソース(資材や人材など必ず必要な資産) |
主要活動 | 顧客に価値を提供するために行う主要な活動 |
パートナー | 自社のビジネスモデルに欠かせない相手(顧客とパートナーが重なることがあるが、自社がお金を払う相手はパートナー/お金をもらう相手は顧客セグメントになる) |
コスト構造 | ビジネスモデル運用にかかるすべてのコスト |
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスの構造を設計図のように可視化するフレームワークです。
ビジネスの構造をしっかり整理することで分かりやすくしています。
事業の組織のなかや関係者との共通認識が持てるので、多くの企業で有効活用されていますよ。
ビジネスモデルキャンバスでは、それぞれの要素を関連づけて考えることが大事です。
またビジネスモデルキャンバスでは、自社の事業の相対的な価値も分かります。
売上げを増やすためにも使われるSTP分析について、やり方などをこちらの記事にまとめたので参考にしてください。
【成功・失敗事例付き】安定したビジネスモデルを作るポイント
安定したビジネスモデル作りには、成功している企業をまねてみるのも有効です。
状況の変化に敏感になることや先を見据えた考え方も必要になります。
ここでは、安定したビジネスモデルを作るポイントを企業の成功事例・失敗事例を参考に考えていきましょう。
ポイント①成功しているビジネスモデルに当てはめる
成功している企業のビジネスモデルを自社の事業に当てはめることで、安定したビジネスモデルを作ることができます。
自社とは業界が違っていても成功しているビジネスモデルであれば、当てはめたり組み合わせても良いビジネスモデルが作れますよ。
次に紹介するのは、他社に当てはめてから少し工夫して成功した企業の事例です。
当てはめたからといっても必ずうまくいく訳ではないので、失敗事例もお伝えします。
【成功事例】SPAを活用したニトリ
ニトリのビジネスモデルは「SPA」です。
SPAとは、自社内で企画/デザイン/物流/販売を行うことを指し、ユニクロなどアパレルブランドが導入して成功していることは広く知られています。
SPAのビジネスモデルでは自社で商品企画から販売までを手がけるため、十分な資金を必要とします。
SPAは「specialty stores of private label apparel」で、一見するとアパレルだけに適用できるビジネスモデルに考えられてしまいますが、ニトリではSPAビジネスモデルを導入し、成功していますよ。
それまでの家具屋は仕入れた家具を売っていましたが、ニトリでは家具を製造/販売/持ち帰れない家具は顧客宅に配送/設置・組み立て、とすべて自社で完結させています。
自社内で全てが行えることで、コストを削減し、お客さまのニーズへも寄り添えている成功事例です。
【失敗事例】ファーストリテイリングの「野菜販売事業」
ファーストリテイリングはユニクロを運営する会社です。ユニクロのSPAを活用すれば成功すると見込んで、自社で野菜を育て販売する事業を新たに立ち上げました。
ですが、野菜の安定供給ができずに1年ほどで事業を撤退しています。
農法にこだわり差別化を図ろうとしたのに価格が高かったことも影響したようです。
成功しているビジネスモデルが万能ではないことが分かる事例ですね。
ポイント②ビジネスモデルは定期的に見直す
ビジネスが置かれている環境は変化していくものです。
顧客のニーズや収益構造の変化に気づかずにいると、設定したビジネスモデルがうまく働かなくなります。
定期的にビジネスモデルを見直すと変化に対して柔軟に対応できますよ。
変化に対応して成功した企業の事例と、変化に気づけなかった企業の失敗事例をこれから説明していきます。
【成功事例】環境の変化に対応し安定経営だった「スターバックス」
スターバックスは、サードプレイス(くつろげる空間の提供)というコンセプトを軸に置いて、いち早くモバイルオーダーを取り入れました。
2020年12月には、人との非接触や利便性から「モバイルオーダー&ペイ」を導入し、どこにいてもスマホなどから注文と決済ができるようにしています。
また、どんな場所でも楽しんでもらうために、デリバリーと提携するなど、取り巻く環境によって柔軟に対応し、安定した経営を続けていますよ。
【失敗事例】戦略とニーズがマッチしなかった「ノキア」
ノキアは世界的にも有名な通信会社のひとつで、携帯電話の市場で成功した企業でもあります。
一時期は携帯電話業界のトップシェアを誇っていましたが、現在では苦戦を強いられています。
ノキアがトップシェアから退く原因のひとつが、お客さまのニーズと、さまざまなタイプの商品を発売するといった先進的な戦略とにズレがあったことです。
ノキアは音楽やゲームに特化した携帯電話や、手のひらサイズの携帯電話、回転するカメラ付きの携帯電話など、常に変化をし続けていました。
しかしお客さまが携帯電話に求めていたのは、「機種が変わっても変わらない使いやすさ」や「ノキアの携帯電話を選んだからこそ得られる価値があること」だったと考えられます。
ノキアのやりたいこと、提供し続けられる価値と市場のお客さまが求めることがズレていき、トップシェアから退く結果となってしまったのです。
ポイント③長期的な経営視点を持つ
安定したビジネスモデル作りには、長期的に持続可能かどうかの判断が大事なポイントです。
自社の内部環境や外部環境の分析を行うことがカギになります。
分析もせずに作ったビジネスモデルでは、好調にスタートしても既存のやり方を邪魔したりコストがかかりすぎるなど、長く続けることができません。
ここでは、長期的経営視点から成功した企業の事例と、環境分析が足りなかった企業の事例を紹介します。
【成功事例】定期収入のためにサブスク化した「Adobe」
Adobeでは、売り切りの永久ライセンス型ソフトウエアを年間契約ライセンス型のサブスク方式に変えて収入を安定させています。
売り切り型は価格が高く何年かに1度のバージョンアップにも費用がかかり、売上げが増えるのは新バージョン発表後に集中していました。
サブスク方式は売り切りとは違い、長期的な契約が見込め定期収入を獲得できます。
バージョンアップの間隔も早く無料なので、お客さまが手軽に試せるようになったことも顧客数を大幅に増やすことにつながりました。
【失敗事例】半年でサブスクから撤退した「AOKI」のスーツレンタル事業
AOKIが始めたのは、スタイリストが選んだスーツのコーディネートをサブスク方式で利用してもらうレンタル事業でしたが、わずか半年で撤退となりました。
当初の目的は新規顧客の獲得でしたが、利用客のほとんどが既存客であったため、カニバリをおこしたことが原因です。
カニバリとは「共食い」のことで、自社内の事業同士で競合することを言います。
また、レンタル事業がクリーニングや衣装の保管などに予想以上にコストがかかったことも一因です。
本来継続的にスーツを購入してくれたお客さまがスーツのサブスクに移ってしまうことで、中長期的な黒字が見込めなくなり失敗に終わりました。
まとめ
この記事では、ビジネスモデルの作り方を紹介しました。
最後に簡単にまとめます。
- ビジネスモデルとは事業で収益を上げる仕組みのことで事業の設計図
- ビジネスモデルはたくさん種類のなかから自社に合うものを選ぶことが大事
- ビジネスモデル作りには同じ業界のビジネスモデルの分析が必須
- 収益化できそうなアイデアを全部出す/絞り込む/ブラッシュアップの順にビジネスモデルの案を出す
- 実現できそうなビジネスモデルだけを選びビジネスモデルキャンバスで作り上げる
- 安定したビジネスモデル作りのポイントは企業の成功モデルに当てはめたり、状況の変化に合わせた見直しをする
- 長く持続できるビジネスモデルを作ることが事業の安定につながる
ビジネスモデルの活用により収益を上げるための仕組みが出来上がり、安定した事業展開が可能です。
この記事で紹介した作り方や大事なポイントを参考にして、独自のビジネスモデルを構築してください。