価格の決め方とは?価格設定の方法や計算の仕方を徹底解説
- 価格の決め方が分からない
- はじめは高く売って、売れなかったら安くすればいい?
- 適正価格ってなに?
インターネットの普及に伴い、ネットショップや通販サイト経営、情報販売など、個人でお店を出す人が増えています。
何を売るかはすぐに決められても、価格の決め方に悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
いざ商品を販売しようとしても商品の価格が適正でなければ、顧客は商品を買ってくれません。
当然ながら利益を上げることもできませんね。
この記事では価格の決め方を3つの方法に分けて紹介します。
詳しい計算式や消費者心理に基づいた価格設定のテクニックもまとめているので、ぜひ参考にしてくださいね。
【前提】販売価格を決める際に知っておくべき基本用語
原価 | 「材料費」「労務費」「製造費」など 商品やサービスを提供するためにかかった総額の費用 |
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原価率 | 売上に対して原価がどのくらいかかったかを表す数値 「原価率=原価÷売上×100」で求めることができ、原価率が低いほど儲けが多いことを意味している。 |
利益率 | 売上の中で利益の割合がどのくらいかを表す数値 「利益率=利益÷売上×100」で求めることができ、利益率が高いほど儲けが多いことを意味している。 |
「原価/原価率/利益率」は販売価格を決める際に、よく出てくる用語です。
販売価格を決める際の基本となる部分なのでしっかり覚えてくださいね。
3つの用語の意味をふまえた上で、価格設定についてさらに詳しく見ていきましょう。
価格の決め方はおもに3種類!種類ごとの計算方法を徹底解説
価格を決める際に大切なのはしっかりと利益を出すことです。
しかし、多くの利益を出すために価格を高くしすぎると売れませんし、安くしすぎて利益がほとんど出なければ商売になりません。
価格の決め方にも種類があるので、販売したい商品やサービス、ターゲットに合わせた価格設定を行うことが重要です。
ここでは価格決めの軸となる3つの考え方と価格の設定方法を紹介します。
価格の設定方法をよく読んで消費者に買ってもらいやすい価格を学びましょう。
決め方①商品やサービスにかかるコストをもとに決める
ひとつ目は、商品やサービスを提供するまでにかかった費用を基準にする価格の決め方です。
原価や利益率をもとに価格を設定するので、どのくらい利益を得られるのかわかりやすいのがメリットですね。
ただし、かかったコストに対して利益を上乗せするので、市場価格や消費者の目線を無視した価格設定になる可能性があります。
なので、売り手に有利な業界や市場競争があまり激しくない業界向けの価格設定方法と言えます。
それではコストをもとに価格を決める方法を詳しく見てみましょう。
価格の設定方法:コストプラス法
販売価格=原価(原材料費・販促費・広告費など)+利益
コストプラス法は商品の原価に利益をプラスする方法です。
直接生産を行う製造業やメーカー、売り手市場の傾向が強い業種で多く利用される価格の計算方法ですね。
たとえば、原価が10,000円の商品で5,000円の利益を上げたいなら10,000円+5,000円で販売価格は15,000円になります。
コストプラス法の計算方法はシンプルで分かりやすいのですが、利益を重視しすぎると市場価格からかけ離れてしまうので注意しましょう。
価格の設定方法:マークアップ法
販売価格=原価(仕入れ原価・販促費・人件費など)+利益
マークアップ法はコストプラス法と同様に原価に利益をプラスする方法です。
仕組みはコストプラス法と同じですが、マークアップ法は仕入れに重点を置く業界、例えば小売業者や卸売業者で用いられる価格の設定方法です。
マークアップ法は売れれば利益を上げられますが、売り手の希望価格なので、価格競争の激しい市場では需要に合わない場合がありますよ。
決め方②市場や競合他社の価格をもとに決める
市場や競合他社の価格を参考にして販売価格を決める方法もあります。
すでに市場に出回っている商品やサービスの価格をもとに販売価格を決めるので相場が分かりやすく、設定した価格が顧客にも受け入れてもらいやすいのが特徴です。
ただし、市場や競合他社よりも販売価格を安くして売上を伸ばそうとすると、価格競争に陥る可能性がありますよ。
なので低価格を売りにするのではく、価格以外の付加価値を付けたり、オリジナリティをアピールするなどして選ばれる商品にする戦略が大切になってきます。
では、具体的な価格の設定方法をみていきましょう。
価格の設定方法:市場価格追随法
市場価格追随法はすでに市場に出回っている競合商品の価格を基準にした価格の設定方法です。
既存の商品やサービスの価格を参考にするため、販売価格の目安が分かりやすい点がメリットです。
付加価値があり競合商品との差別化が明確にできている場合は、市場価格よりも高めに価格を設定し、高利益を生み出すことができますよ。
反対に差別化ができていない場合には価格のみで勝負することになるため、資金力や人材が豊富な大手企業の方が有利と言えるでしょう。
市場価格追随法で価格を設定する際は、安さ以外の部分にも目を向けてしっかりとマーケティング戦略を練ることが大事ですよ。
価格の設定方法:プライスリーダー追随法
業界の中で大きな影響力を持つリーダー的企業の販売価格を基準にして価格を決めるやり方がプライスリーダー追随法です。
携帯電話やブロードバンドなど、業界によっては市場を引っ張るプライスリーダーとなる企業がいる場合がありますよね。
プライスリーダーは消費者からの信頼度が高く、影響力が強ければ強いほど価格設定においても影響が出てきます。
プライスリーダー企業より高い値段設定をする場合は、よほど差別化ができる商品やサービスでなければ難しいでしょう。
また低価格を売りにするなら、原価を抑えるなど価格の維持をし続けなければ利益を上げるのは難しくなってしまいます。
プライスリーダーがいる業界は、価格はもちろんリーダー企業がどのくらい業界に影響があるのかを知っておくことが大切ですよ。
価格の設定方法:慣習価格法
慣習価格法は業界で長年にわたって慣習的に決められてきた価格にならって販売価格を決める方法です。
身近な例で言うと、自動販売機の飲み物やもやしなどが慣習価格法によって値段を決めている商品ですね。
長年にわたって慣習化されている価格なので、消費者の意識に値段設定が根付いています。
なので、消費者が想定している価格よりも高く設定すると消費者の購買意欲が下がり、商品の購入につながらなくなってしまいます。
さらに消費者の意識に価格が根付いているため、原材料などが高騰し生産コストが上がってもある程度販売価格を維持していく必要もありますよ。
決め方③マーケティング戦略をもとに決める
最後は消費者の需要や消費者が製品やサービスに感じる価値(カスタマーバリュー)を把握してマーケティング戦略を立てることで、価格を決める方法です。
マーケティング戦略をきちんと立てれば、利益を最大限に高めることができますよ。
なぜなら、消費者にとって需要のある商品は多少値段が高くても売れますし、カスタマーバリューの高い商品なら消費者の購買意欲は高まるからです。
ここからはマーケティング戦略を利用した価格の決め方を紹介するので、参考にしてくださいね。
価格の設定方法:名声価格法
「高価なものには価値があるはず」と考えて高価な商品を買った経験はありませんか。
高い価格自体が商品やサービスの価値を高めるという消費者心理に基づいて、価格を高く設定するやり方が名声価格法です。
高級ブランドや宝飾品など、商品を持ったりサービスを受けたりすること自体がステータスになるような場合によく使われます。
価格の高さが商品の価値を高めたり、所有することで消費者が満足感を得られるため、価格は販売する側が有利に決めることができますよ。
ただし、名声価格法は高い価格に見合った品質やブランド力がなければ消費者の信頼を獲得できません。
一部の商品やサービスに限られた価格設定の方法であることは念頭においておきましょう。
価格の設定方法:価格差別化
同じ商品やサービスでもターゲットによって複数の価格を設定する方法が価格差別化です。
映画館などで「学割」や「シニア割」を耳にしたことはありませんか。
「学割」や「シニア割」などは提供するもの(映画)は同じでも見る人によって価格が異なります。
通常の料金と値段設定を変えて価格の差別化をすることで、異なるターゲット層への効果的なアプローチが可能になります。
つまり、価格差別化を取り入れることで利益の最大化が見込めるのですね。
しかし、通常料金と値段の差をつけすぎると、通常料金で設定しているターゲット層から批判を受ける可能性もあります。
顧客が不公平さを感じないよう、価格の設定理由や根拠を明確にするのがポイントですよ。
消費者心理を利用した価格決めのテクニック【まとめ表】
消費者心理をうまく利用すれば、売上アップにつなげられます。
ここでは消費者心理を利用した価格決めのテクニックを簡単に紹介します。
ちょっとした工夫で顧客の購買意欲を高められるのでぜひ取り入れてみてくださいね。
端数価格 | ・あえて価格を端数にしてお得感を出す手法 ・消費者の購買意欲をあおる効果がある 例)2,000円ではなく1,980円で設定する |
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段階価格 | ・低価格/中間価格/高価格の設定をし、中間価格の商品を購入してもらう手法 ・複数の価格設定がある場合、人は「中間」を選ぶという心理に基づいた価格設定のやり方 ・内容に差があり価格差を出せるものに有効 例)コース料理5品5,000円/7品(メイン国産牛)8,000円/7品(メイン和牛)10,000円 |
抱き合わせ価格 | ・複数の商品やサービスをセットにし、1つの価格にして販売する手法 ・売上を上げたり、人気商品と在庫品を組み合わせることで在庫調整できる 例)航空券+宿泊が一緒になった旅行パッケージ |
ロスリーダー価格 | ・客寄せのために赤字覚悟で特定の商品を「おとり商品」として売り出すこと ・ロスリーダー価格の商品のみでは利益は上げられないが、「おとり商品」を目当てに客数が増え、顧客の購入点数が上がることで売上アップにつながる 例)スーパーの特売品 |
マーケティングでよく使われる心理効果「スノッブ効果」についてはこちらの記事にまとめているので興味のある方はチェックしてみてください。
販売価格を決めるときのポイントは「顧客目線を忘れないこと」
価格を決める際に多くの利益を得ることは大切ですが、同時に顧客の立場も忘れてはいけません。
どんなに計算式にのっとった販売価格を打ち出しても、顧客から適正価格だとみなされなければ商品は売れないからです。
適正価格にするためには、ターゲット層が買いやすい価格帯を調査したり、原価を常に見直したりといった分析が大切です。
顧客はどんな商品やサービスを求めているのかを顧客視点できちんと把握することで、適切な価格設定を導き出すことができますよ。
まとめ
最後にこの記事の内容をまとめます。
- 価格を決める際に覚えておくべき基本用語は「原価/原価率/利益率」
- 価格決めの軸となるのは「商品のコスト」「市場や競合他社の価格」「マーケティング戦略」の3つ
- コストをもとにした値段の決め方には「コストプラス法」と「マークアップ法」がある
- 市場価格やプライスリーダーに追随する方法や慣習価格にならう価格設定方法もある
- マーケティング戦略をもとに価格を設定する場合「名声価格法」や「価格差別化」が有効
- 顧客視点で適正価格を設定することが重要
価格の決め方にはさまざまな種類があり、どの決め方にもメリットとデメリットがあります。
価格を決める際はターゲットや市場の分析を行い、需要と供給のバランスを考慮して、消費者にとって適正な価格設定を心がけてくださいね。