【失敗談あり】行政書士を廃業する理由と開業(起業)成功のコツ
- 行政書士は廃業する人が多いって本当?
- 行政書士は仕事がないと聞くから不安
- どうすれば行政書士の独立開業が成功するの?
行政書士は飲食店を始める際の許可をもらったり、遺言や相続の問題に関わったりと生活に身近な内容を取り扱うことが多いので、法律の初心者でも勉強しやすく人気のある資格です。
同じ士業である弁護士や税理士などと違い、受験するにあたっての制限もありません。資格試験にさえ合格すれば、すぐ行政書士として独立できることも人気の理由のひとつですね。
独立に成功すれば高収入が見込める行政書士ですが、実は仕事がうまくいかずに廃業するケースも多いです。
せっかく独立開業した行政書士を廃業としないためにも、何に気をつけて開業すべきなのかをしっかりと理解することが大切ですよ。
この記事では行政書士が開業に失敗する原因と開業を成功させるコツを紹介しています。行政書士として開業する時によくある質問もまとめているので参考にしてくださいね。
後悔してる?行政書士の開業(起業)に失敗した体験談を紹介
行政書士は人気の国家資格ですが、うまくいかずに廃業する人もいます。
実際に総務省が公表している行政書士の登録状況によると、令和3年度の新規登録者は2,687人で、登録抹消者数は1,881人となっています。(※1)
ここからは行政書士の資格に合格し開業したにも関わらず、失敗してしまった方の体験談を紹介します。
なぜ行政書士の開業に失敗したのか、具体的な理由をみていきましょう。
(※1)総務省 行政書士制度|【表1】行政書士の登録状況(令和3年度)
体験談①行政書士を副業として開業した50代男性
こちらで紹介するのは副業として行政書士の開業をした50代男性の体験談です。
開業に失敗した経緯から廃業の原因、廃業して学んだことまでをまとめています。
ぜひ参考にしてくださいね。
- 50代男性行政書士の実例:開業・起業に失敗した経緯
- 50代男性行政書士の実例:なぜ廃業したのか?
- 50代男性行政書士の実例:失敗から学んだこと
50代男性行政書士の実例:開業・起業に失敗した経緯
行政書士資格を保有していたので、その資格を活かして行政書士を「生業」にできるように開業しました。仕事の副業といった形で、本業の収入を補填するのが目的でした。
ただ、行政書士は継続的な顧客の確保が非常に重要です。
その意味で、わずかな顧客とこれから獲得予定の見込み顧客だけが頼りでは経営を維持することができず、ほぼ集客できずに廃業となりました。
※上記は自社の独自アンケート調査をもとに作成したものです。
50代男性行政書士の実例:なぜ廃業したのか?
コロナなどによって本業の収入が大きく減少したため「何か別の方法で収入を得られないか」と思いついたのが行政書士でした。
幸いにも行政書士の資格を保有していたのと、会社関係でわずかな顧客層があったことで開業しました。
しかし、この業界で報酬を得るには「顧客数」が重要です。
しっかりとした目論みもないまま、わずかなツテを頼りに開業したことが最大の問題であったと思います。
※上記は自社の独自アンケート調査をもとに作成したものです。
50代男性行政書士の実例:失敗から学んだこと
まずは顧客データを明確にし、顧客数を確保することです。そして、一定の顧客数をクリアした後は市域相場の報酬料を考慮し、月の粗利を明確にしないことには成り立ちません。
顧客や同業者とのパイプ作りを行った上で粗利追及を行い、Wワークとしてやっていけるようであれば、開業に踏み込むスタンスをとるべきでした。
コロナといったイレギュラーな有事であったことから生活の立て直しを急いだことも失敗の原因です。収入面の確保には、慎重になるべきでした。
※上記は自社の独自アンケート調査をもとに作成したものです。
行政書士の独立開業が失敗する原因は「準備不足」
体験談からも分かるように、行政書士が開業に失敗する大きな原因は準備不足です。
下準備をせずになんとなく開業すると、うまく行かずに失敗してしまう可能性が高くなるのですね。
廃業の原因として、主に次の3つの準備不足があげられます。
ひとつずつ詳しく説明していきますので、参考にしてくださいね。
準備不足①集客方法を考えていない
行政書士として新しく事務所を開業しても、待っているだけでは相談者は来ません。
どのような方法で集客を行うのかは、開業する前に考えておきましょう。
一番スタンダードな方法は相談者を紹介してもらうことです。
弁護士や税理士から仕事をもらったり、地元の商工会議所などを通して行政書士を探している相談者を紹介してもらうことで、仕事の依頼が増えます。
相談者との間に紹介元が入っているので、相談者から無理難題を言われることが少ないというメリットがありますよ。
そのほかにもホームページやブログを作成して集客する方法も有効ですね。
また、「士業ねっと!」など行政書士と相談者をマッチングさせるシステムもあります。
行政書士を開業する準備として、自分に合ったベストな集客方法を考えることも失敗しないための大切な要因ですよ。
準備不足②経営者としてのノウハウがない
行政書士としては有能であっても、経営者としての知識や能力がなければ独立開業を成功させることはできません。
行政書士の事務所を経営するためには、経営者としてのノウハウが必要です。
例えば新規顧客を獲得するためのマーケティング戦略を考えたり、事務所を運営するための資金調達、ほかにも人を雇用しているのならば労務管理などですね。
経営者は行政書士の仕事以外にもやることがたくさんあります。
税金や会計などの知識を身につけ、正しい資金計画のもと事業を行うことで先の見通しもたち、事業の継続につながっていくのですね。
行政書士として成功するには、事務所を経営するための知識が必要不可欠です。
準備不足③同業者や他士業の先生との関わりがない
行政書士などの士業にはそれぞれ担当できる業務の範囲が法律で決まっており、分野ごとに細かく定められています。これを「業際(ぎょうさい)」と言います。
間違ってほかの士業の業務に手を出してしまうと、法律違反となり処分を受ける可能性があるのですよ。
そのため弁護士や税理士といったほかの士業の先生とのつながりを多く持つことが求められます。
行政書士事務所に相談に来る人は、どの分野がどの士業の担当なのかを細かく調べていく人はいません。自分の専門外の相談者が来た時には、担当できる士業の先生を紹介する必要があります。
また、行政書士の分野にも許認可や相続、外国人雇用などさまざまな分野があります。自分の得意分野ではない相談がきた時に対応できるよう同じ行政書士の知り合いを持っておくことも大切ですよ。
開業する前には、同じ行政書士やほかの士業の先生と協力し合える環境を作っておきましょう。
行政書士の開業で成功するための6つのポイント
ここからは行政書士として成功するためのポイントを6つ紹介します。
試験に受かった嬉しさや勢いで行政書士を開業すると、「イメージと違った」「もっと集客できるはずだったのに」と失敗する可能性が高くなってしまいますよ。
ポイントをしっかりおさえて、行政書士としての独立開業を成功させましょう。
ポイント①仕事内容が自分にあっているかをチェックする
行政書士を廃業する人の中には「とりあえず行政書士の資格だけ取ってみたけど、やっぱり自分には合わなかった」という層が存在します。
行政書士の仕事は地道にひたすら書類の作成をしたり、書類提出のために役所をたくさん回ったりとハードな面が多くあります。
作成した書類にミスがあれば信用問題になるので、正確な事務処理の能力や責任感も求められますね。
そもそもの仕事内容が自分に合っていなければ行政書士を廃業する可能性も高くなります。
実際に業務を行わなければ分からないことももちろんありますが、あらかじめ行政書士の仕事内容をきちんと理解し、自分に合っているのかを確認しておくことが大切ですよ。
ポイント②専門家としてプロ意識を持つ
行政書士は行政手続の専門家です。
資格を取った後も、きちんと勉強を続けて常に情報はアップデートしていきましょう。
近年はインターネットも発達して誰でもいろいろな情報を調べられる時代です。
相談者もネットや本で調べて知識をつけてくる人もいます。
せっかく相談に来ても、素人が調べれば分かる程度のことしか教えてくれない行政書士ではもう相談には来ませんよね。
相談者が求めているのは一歩踏み込んだ専門家の知識や意見です。
日々の勉強を怠ることなく、行政手続の専門家としてのプロ意識を持ち、相談者との信頼関係を築いていきましょうね。
ポイント③挨拶回りで関係を築く
行政書士には同業者や他の士業の先生とのつながりが大切というお話をしましたね。その他にも相談者とのつながりも作らなければいけません。
つながりを作るためにはあなたが行政書士として開業したことを周りに知ってもらう必要があります。そのため開業したら挨拶回りを行いましょう。
一番身近な相談者になる可能性のある親族や知人はもちろん、同業者であるほかの行政書士にも挨拶回りをした方がいいですよ。
なぜなら、先輩の行政書士からアドバイスをもらえたり、仕事の相談ができたりするからです。
さらに他の士業の先生へ挨拶回りすることで業務の連携ができたり、仕事がもらえたりもしますよ。
挨拶回りはできるだけ早く行い、さまざまな人との関係を築くことで仕事へと繋げていきましょう。
ポイント④その場しのぎの値引きはしない
行政書士が行う業務の値段は、行政書士が自由に定められるので明確な設定はありません。
だからといって集客目的などで安くしすぎるのはやめましょう。依頼はくるかもしれませんが、行政書士として稼ぐためには数をこなさないといけなくなるので長続きしませんよ。
また、安い値段設定は「仕事の質に問題があるのでは?」と相談者に不信感を抱かれかねません。
行政書士として働き始めてすぐは、うまくできるか不安で料金を安くしたくなることもありますよね。
しかし、長く行政書士として働くなら仕事にプライドを持ち、その場しのぎの値引きはやめましょう。
日本行政書士会連合会ホームページには、報酬額の相場も載っています。(※2)
主なものを簡単に表にまとめました。
令和2年度報酬額統計調査の結果
建設業許可申請 (個人・新規)知事 | 120,458円 |
経営状況分析申請 | 34,130円 |
宅地建物取引業者 免許申請(新規)知事 | 112,535円 |
マンション管理業者 登録申請 | 82,680円 |
農地法第3条許可申請 | 49,587円 |
平均の報酬額を参考にして値段を決めるといいですよ。
(※2)日本行政書士会連合会ホームページ 令和2年度報酬額統計調査の結果
ポイント⑤宣伝にブログやSNSを活用する
今の時代は地道にポスティングしたり、高額な費用をかけて街中に目立つ看板を設置したりするよりも、ブログやSNSを活用した方が圧倒的に低コストで多くの人に宣伝できます。
Facebook やTwitter、InstagramといったSNSは無料で始めることができ、利用者も多いのでうまく宣伝できれば集客に大いに役立ちます。
特に Facebookは原則実名での登録なので、アカウントの信頼性が高く、ビジネスに向いていますよ。
Twitterはフォローしたり、DMを送ったり気軽にコミュニケーションがとれるので、情報発信だけでなく交流を広げる際にも役立ちますね。
同業者やほかの士業の先生との交友関係を持つ時に、SNSを使うこともできます。
また、相談者のニーズに合った内容をブログに書けば、宣伝に活用できます。
身近に起こりそうな問題をブログに取り上げれば、検索エンジンからの流入で集客につながりますよ。
ブログとSNSを連携させれば、両方からアクセスしてもらえるのでおすすめです。
ブログでの集客のコツはこちらの記事に詳しく載っているので併せてご覧ください。
2023年7月よりTwitterはX(エックス)へ名称を変更しています
ポイント⑥廃業の基準を決めておく
開業する前に、行政書士としてうまくいかなかった場合も想定しておくのが大切です。
例えば「預金が〇〇万円を下回ったら辞める」「月の受注件数で〇件以下が〇か月続いたら辞める」など具体的な数字をあらかじめ決めておきましょう。
廃業の基準が定まっていないと、もし開業してから経営不振が続いても「来月はきっとうまくいく」と思ってしまい、正常な判断がなかなかできなくなってしまいます。
明確な基準を決めておけば、たとえ経営に失敗したとしても損害を最小限に抑えることができますよ。
開業の不安を解消!行政書士の起業でよくある質問5選
ここまでは行政書士が独立で失敗する原因や開業して成功するポイントを見てきました。
まだまだ行政書士について気になることがたくさんあるでしょう。
そこで次は行政書士の開業でよくある質問を5つ紹介します。
行政書士として開業する不安を解消しましょう。
行政書士の開業は廃業率が高い?
行政書士は開業してから3年以内に9割が廃業すると言われたりしますが、廃業率の高さを裏付ける正確なデータはありません。
この記事の冒頭でもお伝えしましたが、令和2年度の登録抹消者数は1,881人です。令和2年度当初の登録者数49,480人をもとに廃業率を計算すると約3.8%です。(※1)
中小企業庁による調査では、令和元年度のすべての業界全体の廃業率が3.4%なので、行政書士の廃業率は特別に高いわけではないのですね。(※3)
行政書士の廃業率が高いと言われている理由は、自分で営業をして積極的に仕事を取ってくる必要があるため、資格を取っただけでは行政書士として生計を立てていけないからなのですよ。
また、行政書士だけでなく社会保険労務士も廃業率が高いと言われています。行政書士と社会保険労務士は相互性があり、兼業されることも多い資格です。
こちらの記事では社会保険労務士の開業についてまとめているので、興味のある方は参考にしてみてください。
(※1)総務省 行政書士制度|【表1】行政書士の登録状況(令和3年度)
(※3)中小企業庁ホームページ「小規模企業白書」
行政書士が開業(起業)するメリットは?
- 自身のライフワークに合わせて自由に働ける
- PCや電話などの連絡手段があれば仕事ができる
- 定年がなく長く続けられる
行政書士として独立すると、自分の好きな時間に自由に働けることに加え、仕事量も自分で調整できるというメリットがあります。
自宅開業であれば初期費用を抑えられるので、開業コストの負担が少ないのもメリットですね。
行政書士として開業したら定年もないので、仕事をやればやった分だけ収入につながりますよ。
行政書士の開業1年目の年収はどれくらい?
行政書士の平均年収は400万以上と言われていますが、稼げている行政書士の年収は1000万を超えています。しかし、開業1年目はなかなかシビアで240万程度が現実です。
行政書士は国家資格ですが、開業してすぐに稼げるようになるわけではありません。
地道な経験と実績の積み重ねで信頼を得ることで行政書士として稼げるようになりますよ。
仕事がないって本当?行政書士の開業で集客する方法は?
ネットなどでは「行政書士は仕事がない」と言われていますが、そんなことはありません。
行政書士だけが行える独占業務がありますし、業務範囲も広いので、仕事がないケースは稀と考えられます。
行政書士が仕事がないと言われるのは、集客がうまくいっていないからです。
仕事がない行政書士ではなく、稼げる行政書士になるため集客方法を工夫しましょう。
ホームページやブログは悩みを抱えている相談者の方からアクセスしてくれるので便利ですよ。
近年、利用者が増えているInstagramやTwitterといったSNSの活用もおすすめです。
SNSを活用した宣伝方法はこちらの見出しで紹介していますので、参考にしてくださいね。
きちんと集客すれば「行政書士は仕事がない」ということはありませんよ。
行政書士の開業は自宅でもできる?
行政書士は自宅を事務所として開業することができます。
自宅を事務所にすれば、事務所を借りる時の賃貸料がかかりません。通勤も必要ないので時間にもお金にもゆとりを持てますね。自宅を事務所とした場合、水道代や電気代を経費として申請できる点もメリットと言えます。
ただし、事務所の住所は日本行政書士会連合会の公式サイトで公開されるので、プライバシーの面ではデメリットになります。
行政書士の自宅開業にはメリット・デメリットがあるので、事務所をどこに構えるかはよく考えましょう。
まとめ
最後にこの記事の内容をまとめます。
- 行政書士が廃業する最大の理由は「準備不足」である
- 行政書士として成功するためには、集客方法を明確にし、ほかの行政書士や他士業の先生とのつながりを持っておく
- 起業するからには行政書士のほかに経営者として知識も必要
- 行政書士として成功するためには、プロ意識を持って顧客からの信用を高め、その場しのぎの値引きをしないことが大切
- 開業したことを伝えるための挨拶回りやブログやSNSを使った宣伝で集客を増やすのが成功のコツ
行政書士の仕事が軌道に乗れば自分のペースで働くことができ、定年もないので安定して稼げます。
廃業する原因や成功のコツを理解した上で事前準備を行うことが行政書士の開業を成功に導く秘訣ですよ。
この記事を参考に行政書士の開業を成功させてくださいね。