ユーザー目線の意味とは?事例から学ぶマーケティング
- ユーザー目線の意味とは?
- 顧客心理を知るにはどうしたらいい?
- 顧客視点でマーケティングの成功事例が知りたい!
ビジネスを行っている側も、状況によっては商品やサービスを購入するユーザー側の立場になり得ます。
そのため、自社のマーケティングにおいてユーザー目線や顧客視点を常に持っていると考えてはいませんか。
しかし、ユーザー目線で商品やサービスを開発したはずなのに、思うような成果が出ず「なにが失敗だったのか」と困惑してしまう方もいるでしょう。
ユーザーに自社の商品やサービスを購入してもらうときは、ユーザー目線よりもビジネスマンとしての視点が先立ってしまうからです。
それでは、ビジネス側が顧客心理を把握し、ユーザー目線に立って商品やサービスを開発・販売するにはどうしたらよいのでしょうか。
本記事は、顧客心理から本当のニーズを探る方法や、マーケティングをユーザー目線で考えるポイント、ユーザー目線を取り入れて成功した企業の事例などを解説しています。
ユーザー目線の取り込みに悩んでいる場合は、ぜひ参考にしてください。
マーケティングにおける「ユーザー目線」とは?
ユーザー目線とはユーザーの立場に立ってニーズを理解し、商品やサービスを開発・販売することです。
商品やサービスを売る側の立場から、「ユーザーが喜ぶだろう」「ユーザーのためになるだろう」という視点で見るのは間違いです。
これはビジネス目線であり、ユーザー目線ではありません。
また、企業や会社から離れた一個人の視点、つまりは自分目線であっても、ユーザー目線からは外れるので注意してください。
人は誰でも消費者という立場になるものの、だからといって自分目線がユーザー目線と同じにはなりません。
ユーザー目線を取り入れるべきビジネスは?
ユーザー目線を取り入れるべきビジネスに限定はありません。
どのようなビジネスでもユーザー目線に立つことが必要です。
たとえば、ユーザー目線は商品やサービスの開発・販売に取り入れられますよ。
また、商品を販売するWebサイトの構築やデザイン、窓口・電話での対応などあらゆるシーンでユーザー目線であることが必要不可欠です。
ユーザー目線がマーケティングで重要な理由
商品やサービスに対する目線は、ユーザー目線だけではなく、ビジネス目線や自分目線もあります。
この3つはまったく別のものです。混同したままでユーザー目線を考えてしまうと、ビジネスを行う側の勘違いや独りよがりを引き起こしてしまうでしょう。
ユーザー目線を正しく理解することで、同時にビジネス目線や自分目線についても正しく理解でき、混同せずにマーケティング戦略を考えられます。
そこでここでは、ユーザー目線がマーケティングで重要な理由を、ビジネス目線や自分目線と区別させながら解説していきます。
理由①お客様はベネフィットを買っている
商品の特徴や長所を強くアピールするのは、商品やサービスを売りたいビジネス側の視点、ビジネス目線です。
しかしビジネス目線では、ユーザーの購買意欲は高まりません。
なぜなら商品やサービスで悩みや課題を解消できなければ、いくら商品やサービスが優れていても、ユーザーにとって購入する理由や意味がないからです。
ユーザーは、商品やサービスを購入することで得られる利益(ベネフィット)が見えないと、「この商品がほしい!」とはなりません。
たとえば薄型のノートパソコンは、「持ち運びがしやすい」というメリットがありますよね。
ですが、機能や利便性ばかりをアピールしても、なかなか購入意欲を高められません。
それでは、「外出先でも仕事ができるから効率がよくなる」というベネフィットを加えてみたらどうでしょうか。
ユーザーは薄型パソコンを手にした後の自分の生活を想像しやすくなり、薄型パソコンがあればどこでも仕事が可能になり、自分の未来は変わるかもしれないと期待できます。
お客様の購入理由となるベネフィットを生み出すのが、ユーザー目線です。
ベネフィットとメリットの違いについては、こちらの記事を参考にしてください。
理由②問題や悩みはお客様のなかにある
「若い女性だからこんな感じが好きだろう」「価格を安くすれば喜んで買ってくれるだろう」のような決めつけは、ユーザーの目線には立っていません。
それがユーザーのニーズだと思いこんでしまっているだけです。
たとえば、洗濯洗剤は「汚れ落ちが一番大事」と思うのは自分目線でしかありません。
ユーザーによっては、「パリッとした洗い上がり」を求めていたり、「肌触りの良いもの」を探したりしています。
ユーザー目線とは「自分がユーザーだったらどう思うか」という視点ではありません。
ユーザー目線ではデータ分析に基づいたターゲットやペルソナの設定と、設定したターゲットやペルソナならどう思うかと考える客観性が重要になります。
どう思っているかはターゲットやペルソナによって異なり、マーケティングでは悩みや商品に対する興味関心の度合いでお客様を潜在顧客や顕在顧客とわけます。
マーケティング用語潜在顧客と顕在顧客の違いについては、こちらの記事を参考にしてください。
顧客目線でユーザーニーズを探る方法
ユーザーのニーズには、自分でもはっきりと認識しているニーズと、自分も認識していないニーズがあります。
顕在化しているニーズが「痩せたい」「ダイエットしたい」だとしても、その奥には「綺麗に思われたい」「健康が気になる」など潜在的なニーズが存在します。
健康を気にしてダイエットを始めたい人は、極端なカロリー制限を伴うダイエット食品には興味を持てません。
いくら「1ヶ月で5㎏痩せるサプリ」を売り込んでも、体に負担が大きいと感じて買ってはもらえないでしょう。
それでは、顧客が求めている真のニーズを探るにはどうしたらよいのでしょうか。以下の4つの方法をご紹介します。
方法①4C分析
4C分析とは、顧客価値(Customer Value)/価格(Cost)/利便性(Convenience)/コミュニケーション(Communication)の頭文字を取った言葉です。
4C分析は顧客視点で考えるマーケティングの分析方法になります。
顧客価値(Customer Value) | ・商品やサービスから得られるベネフィット、企業や商品のブランド、性能や機能などの品質などが顧客にとって価値となっているか |
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価格(Cost) | ・商品やサービスの購入に必要なコストは顧客にとって妥当か ・商品やサービスを手に入れるまでにかかる時間などもコストとして捉え、コストをかける価値のある商品やサービスであるか |
利便性(Convenience) | ・顧客が商品やサービスを購入するまでのプロセスに不便がないか ・決済方法が少ない、問い合わせ先がわかりづらくはないか |
コミュニケーション(Communication) | ・企業側からだけのアプローチ、顧客側が情報を得られるイベントや展示会などが開催されているか ・SNSやメルマガなどの活用は積極的に行っているか |
4C分析は新商品の開発時や業績が伸び悩んだ場合など、顧客目線で事業展開が行われているかを確認するために取り入れられます。
方法②カスタマージャーニーマップ
ペルソナが商品やサービスを認知し、購入・利用するまでの流れを旅に例えてカスタマージャーニーといいます。
カスタマージャーニーをわかりやすく可視化したものが、カスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップでは以下の段階ごとに、ペルソナがどのような行動を取るのか、それに対して企業側はどういった方法で顧客との接点を持つのかを戦略的に考えます。
- 商品やサービスの認知
- 情報収集
- 他社との比較検討
- 周囲への推奨
方法③なぜなぜ分析
なぜなぜ分析とは、発生したトラブルに対し、なぜそのようなトラブルが起こったのか原因を探っていくものです。
トヨタが工場での生産を合理化するために取り入れていた、トヨタ生産方式の一環になります。
やり方は、トラブルが起こった原因に対し「なぜ起こったのか」を5回繰り返していくものになりますよ。
たとえば、商品の発注ミスが起こった場合を例に、以下の段階を踏んで本当の原因を探ります。
- なぜ発注ミスが起こったのか?→入力ミスをした
- なぜ入力ミスをしたのか?→二重チェックの体制がなかった
- なぜ二重チェックの体制がなかったのか?→担当者を決めていなかった
- なぜ担当者を決めていないのか?→誰も提案をしなかったから
- なぜ誰も提案しなかったのか?→誰かがやってくれると思っていたから
この例では、商品の発注や入力について担当者が決まっていなかったのが本当の原因と分かりますよね。
こうして「なぜ?」を繰り返していくことで、本質を見抜く力を付けられます。
そのため、なぜなぜ分析は原因を探るだけではなく、顧客の真のニーズの掘り起こしにも利用できます。
方法④ユーザーテスト
ユーザー目線に立って商品やサービスの開発・販売を行っても、結果が伴わない場合もありますよね。
「もう打つ手はないのか」と諦めてしまいそうになりますが、そのようなときはユーザーテストを行ってみましょう。
ユーザーテストとは、座談会やABテストなどで商品やサービス、Webサイトなどを利用してもらい、課題や改善点などを洗い出すものです。
商品やサービスを利用した顧客がどう感じたかを知る機会を得られ、顧客心理の理解も進みます。
マーケティングでよく行われるABテストについては、こちらの記事を参考にしてください。
【事例で解説!】マーケティングをユーザー目線で考える3つのポイント
ここまで、ユーザー目線とビジネス目線や自分目線の違いをお伝えしてきました。
しかし、ビジネス目線は利益の追求だけではなく、利用した顧客の幸せや満足感を想像するものとすると、ユーザー目線も持ち合わせているといえますね。
また、自分目線は消費者目線でもあるため、自分目線で商品やサービスを考えるすべてが間違いとは限らないでしょう。
このように、ユーザー目線とビジネス目線、自分目線は簡単に区別できるようで、本質を捉えるのは難しいものです。
そのため混同が起きてしまい、ユーザー目線で考えるマーケティングが失敗しやすくなります。
それでは、マーケティングをユーザー目線で考えるには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
以下に3つのポイントをまとめましたので、詳しく見てみましょう。
ポイント①お客様の声と実際のニーズの違いを理解する
お客様の声を取り上げ、改善していけば商品やサービスが売れるようになるとは限りません。
なぜなら、お客様の声は表面的な商品やサービスへの要望であることが多いからです。
実際のニーズこそが商品やサービスへの真の要望なので、お客様の声を鵜呑みにして商品やサービスを開発・改善しても、思うように売上は増加しません。
そのため、アンケートなどで集めたお客様の声を鵜呑みにしたり、お客様の声を大きく反映させた商品やサービスの開発はあまり意味がないでしょう。
それよりも、自社の商品やサービスが持つ価値・ブランドをしっかりと見極めつつ、ユーザーの本当のニーズを探る必要があります。
ポイント②UGCをうまく活用する
UGCとはUser Generated Contentsの略で、日本語ではユーザー生成コンテンツという意味があります。
たとえばUGCにはSNSやブログなどに投稿された動画や写真、コメントを始め、ECサイトへのレビューなどが含まれます。
企業側が生成したものではなく、消費者や一般ユーザーが生成したコンテンツという点にとても大きな意味がありますよ。
近年は、自分と同じ目線の消費者から提供されるコンテンツの情報を重視する人が増えているからです。
企業がアンケートで集めた意見とは違い、SNSやECサイトなどの投稿やコメントにはユーザーの本心や本当のニーズが綴られています。
こうした声はユーザー目線そのものといえるでしょう。
ポイント③ユーザーの利便性を追求する
商品やサービス、お店、Webコンテンツなどがいくらオシャレでセンスがあっても、機能性や利便性に優れていなければユーザーはすぐに離脱してしまいます。
たとえばWebコンテンツの場合、ボタンの位置がわかりにくい、文字が小さくて読みにくいなどは機能性や利便性が失われており、ユーザーは扱いにくさから2度と利用しないかもしれません。
ユーザーは理解のしやすさや使いやすさを感じて初めて、商品や企業に対して信頼感を持ちます。
作成した商品やWebコンテンツが企業側の自己満足になっていないか、実際に使ってみて使い勝手を検証することが大切です。
【成功事例】ユーザー目線が成功した3つ企業
マーケティングを正しいユーザー目線で考えることができれば、顧客の真のニーズを掘り起こせます。
さきほど紹介した「マーケティングをユーザー目線で考える3つのポイント」を、それぞれ押さえている成功事例を詳しく見てみましょう。
事例①マクドナルド
ジャンクな食べ物といえばマックのイメージが強いですが、お客様の声には「ローカロリーでヘルシーなメニューがほしい」とありました。
そこで野菜や果物を使ったサラダマックを販売したものの、あまり売れずに終了しています。
一方で、メガマックやクォーターパウンダーなどのヘビーな商品を開発・販売したところ、こちらは大ヒット商品となりました。
マックでは思いっきりジャンクな食べ物を食べたいという、顧客の真のニーズが引き出された典型的な形でしょう。
事例②ワークマン
Twitterやインスタグラムを見ると、「#ワークマン女子」というハッシュタグを用いてワークマンの商品を愛用しているユーザーの写真が数多く見つけられます。
SNSでの投稿は本人に使用許可を取った後、ワークマンのホームページにも掲載されています。
ワークマン商品の使用感や使用シーンが、企業を通じてではなくユーザーを通じて発信されることで、ユーザー目線の商品紹介を実現していますね。
ワークマンの事例はUCGを最大限に活用し、購入意欲を高められているユーザー目線の成功例です。
事例③セブンイレブン
銀行ATMの導入や宅配サービスとの連携など、身近で便利だったコンビニの利便性をさらに高めて成功したのがセブンイレブンです。
また、コンビニといえば手頃な商品を手頃な価格で買えるのが売りのひとつでしたが、セブンイレブンでは高価格帯の商品も発売し大好評を得ていますよ。
顧客の質の良い商品を手に入れたいというニーズを、コンビニの利便性で実現したこの事例は、以後のコンビニの高級路線や専門店とのコラボなどに大きな影響を与えた成功例です。
まとめ
マーケティングにユーザー目線が重要な理由や、成功事例などを紹介しました。
最後にこの記事をまとめます。
- ユーザー目線とは、ユーザーの立場に立ってニーズを理解し、商品やサービスを開発・販売すること
- ユーザー目線、ビジネス目線、自分目線は明確に区別する
- 顧客心理やユーザーニーズを探るには、4C分析/カスタマージャーニーマップの作成/なぜなぜ分析/ユーザーテストを行う
- お客様の声とニーズの違いを理解し、UGCの利用や、利便性の追求を意識する
ユーザー目線の正しい理解が、マーケティング成功の鍵となります。
ユーザー目線に立って考えたとき、それが本当にユーザー目線なのか、ビジネス目線や自分目線になっていないか今一度振り返ってみることが大切です。