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森谷俊之

LibRu代表取締役

個人・小規模事業者向けのマーケティング・ブランディングのコンサルタント/セールスコピーライター

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【初心者向け】価格戦略の成功例・失敗例をわかりやすく解説

  • 商品やサービスの適切な価格とは?
  • 多くの消費者が気にしているのは価格!?
  • やみくもに価格を下げるだけではダメ?

お客さまの消費行動を左右する価格、「いったい自社や自分の商品はいくらが適正なの?」と悩む方も多いですよね。

マーケティングでは、価格を適正に設定することを「価格戦略」といいます。

「価格戦略」と聞くと、「難しそうだな」「個人事業主の私には関係ないかな」と考える方もいるでしょう。

そこで、この記事では「価格戦略とは?」といった基本を解説していきます。

成功例や失敗例も紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。

価格戦略の必要性を理解して、売れる自社・自分の商品をつくっていきましょう。

目次

価格戦略(プライシング戦略)とは?

価格戦略とはさまざまな要素をもとに商品やサービスに適切な価格を設定する、マーケティング戦略のひとつです。

マーケティング戦略を立案、実行する際に、4P分析というフレームワークがよく使われています。

4Pとは商品やサービス(Product)/価格(price)/流通(Place)/販売促進(Promotion)で構成されていて、このうちの価格の部分が価格戦略にあたります。

価格は「高ければいい」「安ければいい」というものではありません。

なぜなら商品の価格は、お客さまにとって適正で、なおかつ利益がある状態がよしとされるからです。

いくら売っても利益を上げられなかったり、逆に価格を下げることで商品のイメージを落としてしまったりすれば、価格戦略は失敗となってしまうので注意が必要ですよ。

それでは、より詳しく価格戦略の目的や種類をみていきましょう。

価格戦略の目的

価格戦略には、下記などの目的があります。

  • 多くの顧客を獲得する
  • 売上をアップさせる
  • 競合に負けない競争力を身に着ける
  • 価格を安定させ、顧客からの信頼を得る
  • 市場シェアを拡大させる
  • 商品やサービスのブランド力を上げる
  • 利益率などの目標を達成する

価格戦略は、目的を意識して長期的な視点で考えることが大切です。

目先の利益だけにとらわれず、しっかり目的を定め、長期的な戦略を立てて実行していけば、利益の最大化につながるでしょう。

価格戦略の種類を分かりやすく解説

価格戦略といっても、さまざまな種類があります。価格戦略の種類を簡単にまとめたので、みていきましょう。

概要
高価格戦略質の高い商品やサービスを、その質に見合った高価格で販売する戦略高級料理店の飲食代
一流ホテルの宿泊価格
コストリーダーシップ戦略(低価格戦略)競合よりもコストを抑えて、市場で優位に立とうとする戦略低価格なファストフード店
スキミングプライス戦略(上澄み価格戦略)高価格でも購入してくれる層をターゲットにする戦略高級●●(日用品・家電・スマートフォンなど)
ペネトレーションプライス戦略(市場浸透価格設定)多くの人に早く、商品やサービスを浸透させることを目的に、価格を低く設定する戦略オープン記念価格
通販やネット販売の初回限定特価
ダイナミックプライシング戦略需要と供給のバランスにあわせて価格を変動させる戦略高価格でも売れる繁忙期の航空券
宿泊料が安くなるホテルの平日プラン
キャプティブプライシング戦略顧客を虜にするため低価格なメイン商品を販売し、高価な付属品を定期的に購入につなげる戦略カミソリ本体と替刃
カートリッジ式プリンターとインクカートリッジ
ラグジュアリー価格戦略その商品/サービス自体がステータスとなるようなものに、高い価格を設定する戦略ハイブランド
プライスカスタマイゼーション戦略状況に応じて商品やサービスの価格を変動させる戦略観光地の商品
タクシーの深夜料金

価格戦略をたてるためには、自社の目的や競合と比較したときの自社のポジション、自社の技術力や事業規模に応じて、慎重に戦略を練っていくことが大切です。

自社や競合、市場を分析して適切な方法をとることが、価格戦略を成功させることにつながりますよ。

価格戦略のメリットとは?

こちらでは価格戦略の種類別にメリットをまとめたので、みていきましょう。

高価格戦略高い利益を得られる
ブランド価値を高められる
コストリーダーシップ戦略(低価格戦略)競合と同等の価格でも高い利益を得られる
市場シェアを広く獲得できる
スキミングプライス戦略(上澄み価格戦略)早い段階で商品開発費用や広告費などを回収できる
ペネトレーションプライス戦略(市場浸透価格設定)長期的な収益が望める
ダイナミックプライシング戦略利益を最大化させることができる
キャプティブプライシング戦略初期費用が安いため、商品を手に取ってもらいやすい
新規の顧客を獲得しやすい
LTVの向上が見込める
ラグジュアリー価格戦略高品質高価格がステータスになり、商品や企業に良いイメージをもたらす
プライスカスタマイゼーション戦略収益を最大化できる

価格戦略のデメリットとは?

もちろん価格戦略にはデメリットもあります。

価格戦略の種類別にデメリットをまとめたので、みていきましょう。

高価格戦略高価格すぎると、販売数が伸びない
商品の価値を顧客に理解してもらう必要がある
高い品質を保つ必要がある
コストリーダーシップ戦略(低価格戦略)価格競争が激化する
価格を抑えるための初期投資が大きい
価格を下げるために商品やサービスの品質が落ちてしまう可能性がある
スキミングプライス戦略(上澄み価格戦略)後から価格を下げたときに、初期価格で購入した顧客の反感を買うことがある
ペネトレーションプライス戦略(市場浸透価格設定)最初から多くの収益を望むことは難しい
ダイナミックプライシング戦略価格に納得感がないと、顧客離れが起こる
イレギュラーな対応に向かない
キャプティブプライシング戦略付属品の価格に納得感をもたせることができないと、顧客が離れてしまう
ラグジュアリー価格戦略割引や特売、量産など、高級感を損なうようなことはできない
プライスカスタマイゼーション戦略価格に納得感がないと、顧客から反感を買う
適正価格の判断を誤ると、利益を損なう可能性がある

【初心者向け】有名企業が行った価格戦略の成功例

ここからは、誰もが知っているあの有名企業がおこなった価格戦略の成功例を紹介していきます。

最近「物価高騰」や「値上げラッシュ」というニュースをよく目にしますが、価格を上げても顧客に選ばれ、業績を伸ばしている企業はたくさんあります。

高価格戦略を成功させることで苦難を乗り切った企業や、工夫を凝らしてコストリーダーシップ戦略を成功させた企業も紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。

あなたも商品を購入したことがあるような、身近な企業の実例を知れば、価格戦略とはどのようなものなのか、具体的なイメージがわきますよ。

カスタマーバリューの提供で高価格戦略に成功「東京ディズニーランド・シー」

東京ディズニーランド/東京ディズニーシーは、ダイナミックプライシング戦略を導入し、結果を出しつつある例です。

東京ディズニーランド/東京ディズニーシーは2021年3月に、平日や休日、長期休みなど、日によってチケットの価格が変動する価格戦略を打ち出しました。

閑散期にチケットを安くすることで、来場者を増やし、繁忙期のチケットを高く設定することで来園者数を抑え、混雑緩和につなげようとしたのです。

結果、来園者数はピークだった2018年までは届かないものの、2021年〜2023年まで右肩上がりで回復傾向にあります。

高価格戦略でブランディングに成功した「スターバックス」

スターバックスは、高価格戦略でブランディングに成功した例です。

スターバックスのコンセプトは、「居心地が良くくつろげる第3の場所」です。

第1が自宅、第2が職場、それにつづく居心地の良い第3の空間を提供することで、コーヒー以外の付加価値を提供しています。

ですからスターバックスのコーヒーは、他のコーヒーチェーンと比較すると少し高めです。

ですがこの居心地の良さという付加価値をつけることで、価格に見合った価値を提供しています。

スターバックスは2022年、2023年と2年連続で値上げをおこなっているのにもかかわらず、お客さまが離れることはなくブランド力を保っているのには、こういった背景があるのです。

ブランディングの正しい意味や効果的な手法についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてくださいね。

低価格のポジショニングに成功した「GU」

GUのコンセプトは「価格を気にせずファッションを自由に楽しめるブランド」で、2週間という短い期間で新商品を導入するなど、トレンドを高く意識しています。

それなのに、低価格で提供できているのは、価格を決めてから予算内に収まる生産方法を考案しているからです。

こうしてGUは日本初のファストファッションブランドとして、低価格でオシャレを求める客層をターゲットとした低価格ブランドのポジショニングに成功しました。

値ごろ感のある価格設定が功を奏した「ユニクロ」

ユニクロは、誰もが気軽に購入できる値ごろ感のある価格設定と、ベーシックでありながら品質がいいというブランドイメージで成功しています。

これはSPAという、製造から販売までを一貫しておこなう製造小売業を採用することで、徹底してコストを抑えられているからです。

ユニクロはこのコストリーダーシップ戦略により、質の高い商品を値ごろ感のある価格で商品を提供し、ペネトレーションプライシングによって、多くの人にユニクロというブランドを浸透させました。

そして今では、国内売上高1位を獲得しています。

品質を保った低価格戦略で成功した「サイゼリヤ」

サイゼリヤのコスト・リーダーシップ戦略を支えるのは、効率化とシステム化です。

サイゼリヤでは人件費を抑えるため、店舗での業務を完全マニュアル化しています。

そうすることで接客レベルを維持しながら、最低限の人数でもお店を回せるのです。

さらに自社農家を所有しているため、調理の手間が省ける生産性の高い四角いレタスも開発したり、新鮮な野菜を各店舗に効率良く配送するシステムを構築できたりします。

このようにサイゼリヤは、徹底的な効率化とシステムによってコストを抑え、低価格でおいしいメニューを提供することで、競合との価格競争力を維持しているのです。

徹底的な効率化で顧客のニーズを満たした「ニトリ」

次に紹介するのが、「お値段以上、ニトリ」というキャッチコピーが印象的なニトリです。

この「お値段以上」という品質が実現できた理由は、ニトリが家具・インテリア業界でいち早くSPAを導入したことにあります。

SPAとは、ユニクロと同様に原材料の調達から製造、流通、販売までを一貫しておこなうビジネスモデルです。

そして当時の業界の常識にとらわれることなく、海外拠点の構築に乗り出して、SPAの導入を成功させました。

その結果、通常であればある程度市場シェアを確保しなければ取り入れづらいコストリーダーシップ戦略を、市場シェアを伸ばす前から導入することができたのです。

このSPAの導入は、徹底的な効率化を図り、低価格ながらも品質の高い商品を提供することにつながっています。

低価格戦略による経営悪化から回復した「マクドナルド」

マクドナルドも、徹底した効率化と省力化でコストリーダーシップ戦略に成功した企業です。

ですがマクドナルドは一時、過度なコストリーダーシップによって経営が悪化したことがあります。

2002年には、低価格競争に巻き込まれ、ハンバーガーの価格は税込みで62円にまで値下げされました。

このように一時は「マクドナルドは低価格」というイメージが定着してしまったのです。

しかし今は午後5時以降にパティ量が2倍になる夜マックを始めたり、セットのポテトやドリンクを有料でMからLサイズに変更できるなど、客単価をアップさせる戦略を成功させています。

低価格帯と中価格帯のバランスを重視した上で、経営の安定を維持していますよ。

市場に合わせた価格戦略を行う「無印良品」

無印良品は2022年から続けてきた値下げ路線を一転して、2023年春夏物のおよそ2割の商品価格を平均25%の値上げに踏み切りました。

ですが、無印良品の株価は10カ月ぶりの高値をつけました。

無印良品は1980年の誕生以来、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」の3つの視点を40年以上前から変わらず守り続けており、その独自の世界観から、値上げをしても顧客離れが起きないと認知されています。

顧客が求めているものが安さではなく、無印良品の価値にあるのでしょう。

このように無印良品は、市場のニーズにあわせて、価格戦略を成功させています。

失敗から学ぶ!有名企業が行った価格戦略の失敗例

ここからは価格戦略に失敗してしまった企業の実例を紹介していきます。

価格は企業のイメージにも関わる重要な問題です。

価格を変更したことによってブランドイメージを落としてしまったり、顧客の反感を買ってしまったりすることもあるので注意が必要です。

成功例だけではなく、失敗例もぜひ参考にしてくださいね。

価格戦略がブランドイメージの低下につながった「ティファニー」

ティファニーは誰もが憧れるハイブランドでありながら、手ごろな価格のシルバージュエリーの販売を行い、売上を伸ばしてきました。

ですがその手ごろな価格設定が逆にブランドイメージに影響してしまい、売上を落としてしまったことがあります。

オードリー・ヘプバーン主演の映画「ティファニーで朝食を」からもイメージされるハイブランドのイメージから、若者向けのファッションジュエリーというイメージを持たれてしまったのです。

現在ティファニーは、再び高級路線に戻っています。

高価格帯から中価格帯への移行に失敗した「大塚家具」

大塚家具は従来、高級家具の販売と、創業当初は業界でも珍しい会員制によるプレミアム感の演出を売りにしていました。

担当者が丁寧に接客し、上質で高価格帯の家具を販売していたのです。

ですが高級家具から一転、中価格帯の家具を販売して親しみやすさを演出しようとしたところ、業績を落とす結果となってしまいました。

今までのプレミアム感が薄れることで、既存のお客さまからも反発を受け、業績が低迷してしまったのです。

PlayStation 3の価格設定で反感を買った「SONY」

PlayStation 3は、2006年にPlayStation 2の後続機としてSONYから発売されました。

当時は先進的なBlu-ray Discが搭載され、ゲーム機というよりもパソコンに近い高性能なゲーム機でした。

ですが発売が発表された際の価格設定は、下位モデルでも62,790円と他のゲーム機に比べて高く、消費者の反感を買ってしまいます。

さらにBlue-rayドライブの部品の量産に問題があり、発売日に満足のいく台数をそろえられなかったのです。

そのためPlayStation 3は発売直前に下位モデルの価格を49,980円に改め、その後も新モデル発表時など、価格は段階的に引き下げられていきました。

価格戦略に役立つ心理テクニック「松竹梅の法則」と「アンカリング効果」

価格戦略では、心理テクニックを活用して、設定した価格をより効果的に顧客にアピールすることもできます。

ここでは、価格戦略に使える「松竹梅の法則」と「アンカリング効果」を簡単に解説しますね。

まず、松竹梅の法則とは商品の価格やグレードを三段階にわけて提示すると、真ん中の選択肢を選びやすいという心理効果のことです。

次に、アンカリング効果とは、最初に与えられた情報や数字が、後の情報の認知に影響を及ぼしてしまう心理効果です。

価格戦略を成功させるためには、「価格をいくらに設定するのか」はもちろんのこと、「設定した価格をどう見せるのか」が重要ですよ。

松竹梅の法則アンカリング効果を利用することで、売りたい商品をアピールしやすくなるでしょう。

2つの心理効果については、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

価格だけじゃない!買うまでの流れも大切

商品やサービスの価格は、その商品やサービスの価値だけで決まるものではありません。

広告を目にしたり、問い合わせをして説明を受けたり、お会計をしたり、顧客が商品を購入するまでには、企業と接する機会が複数あります。

このような接点による顧客の体験を、カスタマーエクスペリエンスといいます。

たとえば「広告が印象的だった」「問い合わせ時の対応がよかった」など、顧客の体験に付加価値をつけられると、カスタマーエクスペリエンスが向上し、商品やサービスの価値を引き上げることができるのです。

価格戦略には商品やサービス自体の品質はもちろん重要ですが、このような顧客が商品を購入するまでのカスタマーエクスペリエンスが重要ですよ。

まとめ

今回の記事では価格戦略についてまとめました。

最後にこの記事の要点をみていきましょう。

  • 価格戦略とは、適切な価格を設定することで、利益を最大化させるマーケティング手法
  • 価格戦略は、その目的や状況に合わせ、適切な戦略を選ぶことが大事
  • 価格に見合った価値を提供できれば、値上げをしたとしても顧客は離れない
  • 価格戦略は目先の利益にとらわれない、長期的な視点が重要
  • 商品やサービスの価格は、付加価値をプラスしカスタマーエクスペリエンスを向上させて引き上げる

商品やサービスの価格を決める際は、その価格を設定する目的や、自社や競合他社の状況をしっかりと分析して、慎重に価格戦略を練ることが大切です。

お客さまにとっても、自社にとっても利益のある、価格戦略を検討しましょう。

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