ストーリーテリングとは?やり方やビジネスでの活用例を解説
- ストーリーテリングとはなに?
- ストーリテリングをプレゼンで活用するコツは?
- ストーリーテリングはビジネスでどう役に立つの?
ストーリーテリングを直訳すると「物語を通して語ること」という意味になります。
自分の思いを伝えるときや、商品を売り込みたいときにストーリーを持たせて、相手に自分の話を印象付けたいときに効果的な手法です。
東京五輪の招致活動やiPod発表時のプレゼンテーションでもストーリーテリングは用いられており、近年のビジネスでは重要なスキルとしてさまざまな場所で活用されています。
この記事では、ストーリーテリングの意味や使い方のポイント、活用例を5つのタイプに分けて紹介しています。
失敗談や未来の話など、どのようなストーリーを展開すると聞き手の心に響くのかを知れば、自分のビジネスに合ったストーリーを組み立てやすくなりますよ。
マーケティングに関わるお仕事をされている方はもちろん、コミュニケーションを円滑に進めたい方も、ぜひこの記事を役立ててくださいね。
ストーリーテリングの意味とは?
ストーリーテリングとは、伝えたい思いやコンセプトをただそのままの言葉で伝えるのではなく、印象的な体験やエピソードを交えて話す手法です。
エピソードを交えて伝えることで、聞き手がその思いをイメージしやすくなったり、コンセプトへの理解が深まります。
身近なところだと、擬人化された動物などによって教訓や風刺をたとえ話として伝える寓話はストーリーテリングと言えます。
「三匹の子豚」というおとぎ話をご存じですか。
子豚の三兄弟は、藁の家、木の家、レンガの家をそれぞれ作りますが、手早く仕上げた藁と木の家はオオカミに吹き飛ばされてしまい、レンガの家だけがオオカミの侵入を防ぎ、子豚たちはそのレンガの家で守られたという物語です。
この物語ではおとぎ話を通じて、「ものを作るとき、簡単な方法で早く作るよりも、時間や労力をかけた方が完成度が高く、いざというとき役に立つ」という教訓を伝えています。
これが、ストーリーテリングです。
教訓だけを聴くよりも、子豚のエピソードを交えて聴いた方がより印象的に聞こえ、その重要性も理解が深まりますよね。
このようにストリーテリングは、伝えたい内容をエピソードを交えて語り、より印象的に伝える手法です。
なぜストーリーテリングはマーケティングで活用されているのか?
ストーリーテリングは、宣伝やブランディングなど、企業や商品のマーケティングでも効果を発揮するのですが、その理由は大きく分けて2つあります。
1つ目の理由は「共感を生み、自分ごとに捉えてもらいやすくなる」からです。
ストーリーテリングは、エピソードの主人公と自分を重ねることで共感を誘い、自分ごととしてとらえてもらいやすいという特徴があります。
ですが事実や商品のメリットだけを伝えても、それを自分事だと感じなければ、たとえ聞こえていてもすぐ忘れてしまいます。
ですから困りごとや悩み事などをストーリーに含み、まずは興味を引き共感してもらうことが大事です。
そして2つ目は「ビジョンを伝えやすい」という理由です。
ビジョンを伝えるときにストーリーテリングを活用すると、聞き手にそのビジョンの背景や重要度をイメージさせることができ、その先にどんな未来があるのか具体的なイメージを膨らませてもらいやすくなります。
例えば商品の魅力を伝えるとき、商品の機能を淡々と述べるよりもその商品を使うとどんな素敵な未来が待っているのか伝えた方が、聞き手のイメージが膨らみ、その商品を魅力と感じるようになるでしょう。
このようにストーリーテリングはマーケティングにおいて印象的な広告を打ちたいときや、心に残るプレゼンテーションをしたいときに活用できます。
ストーリーテリングはキャッチコピーでも活用できます。
キャッチコピーの作り方については、こちらの記事を参考にしてください。
【タイプ別】ストーリーテリングのやり方
ここからはビジネスで活用しやすい5つのストーリータイプを紹介します。
大前提として語られるストーリーは真実であることが重要です。
なぜなら、真実だからこそパワーがあり、相手の心を動かす力を持つからです。
そしてストーリーに具体的な数字や感情が含まれているとより真実味が増し、聞き手はそのストーリーに引き込まれます。
先ほど例に挙げた三匹の子豚でいうと「怠け者の長男の子豚は手軽な藁の家を約1週間で完成させました。3匹の中で1番早く家が完成したことに自慢げな様子です」というように数字や感情が含まれると、状況が具体的にイメージできるため現実感が増しますよね。
このようにストーリーテリングに使われるストーリーは、真実であることはもちろん、より現実感を伝えることも大切です。
では、これを踏まえてどんなストーリーだと共感し感情に訴えかけられるのか具体的にみていきましょう。
タイプ①どん底からの脱出ストーリー
どん底からの脱出ストーリーは、ビジネスの場でのストーリーテリングによく登場します。
人の失敗やどん底からの成功話には、「自分もこうなりたい、なれるかもしれない」という勇気をあたえ、共感を生みやすいストーリーです。
例えばこれは、後輩指導や誰かを鼓舞するシーンなどでも活用できます。
売上トップの営業マンが後輩を指導をするとき、「営業のコツは〇〇と△△だよ」「こういうふうにやれば売れるよ」と伝えたとしましょう。
そのような伝え方では「それは先輩だからできるのであって、自分の実力では難しい!」「頭では理解できるけれど、実際できるのかな?」と考える後輩もいます。
そこで、ストーリーテリングを活用してみましょう。
「実は昔は営業成績がビリで、いつも先輩や上司に怒られ辛かった。けれど○○と△△をやってみたら、営業成績がぐんぐん上がって、あっという間に成績トップになることができた。だからもしあなたが営業のやり方で悩んでいるなら、これを試してみてほしい。きっと仕事が楽しくなるよ」
このストーリーを聞いた後輩は、先輩も昔はうまくいかず、自分と同じように悩んだんだと共感し、「自分にもできるかもしれない」「頑張ってみよう」と素直に先輩のアドバイスを受け入れることができるでしょう。
どん底からの脱出ストリーリーは、聞き手に勇気を与え、「自分もこうなりたい」と共感を生みやすいストーリーです。
タイプ②共通の敵を倒すストーリー
共通の敵を倒すストーリーも、敵が同じという一体感から共感を生みやすく、ストーリーテリングを活用する際には効果的です。
呉越同舟という言葉がありますが、もともと仲の悪いもの同士でも、共通の敵を見つけると協力するというほど、共通の敵は想像以上に一体感を生みますよね。
この敵にあたるものは、人や組織でなく、悩みや問題でも同意です。
同じ悩みや問題を抱えた人同士がそろえば、お互いに共感しあい、問題解決への熱意が増します。
例えば、一緒に働く社員とコミュニケーションをとり、仕事を円滑に進めたいと考えた際、「急に話しかけては変に思われないだろうか?」「どう声を掛けたらいいのだろうか?」と不安になりますよね。
そこでストーリーテリングを活用し、下記のように伝えれば、「少し言いづらかったけど、この人になら話してみようかな?」と少し印象が変わるでしょう。
「以前ブラック企業に勤めていたことがあり、理不尽な環境で苦労した。だから今の会社では、お互いに思ったことを言い合い、全員が働きやすい環境を作りたい。そしてみんなの意見を活かしてこのプロジェクトを成功させたいから、ぜひ意見を聞かせてほしい。」
私たちは同じ敵を持つ仲間、同じ問題を解決する仲間ですよと伝えるストーリーは信頼度が増し、それが共感へとつながります。
タイプ③得たモノで未来を変えるストーリー
商品やサービスを紹介したいときは、その商品やサービスを利用するとどんな素敵な未来が待っているのかイメージできるようなストーリーにするのがおすすめです。
より自分ごととしてイメージされ、聞き手がその未来に憧れるようになります。
例えばパーソナルジムの魅力は、専属のトレーナーがマンツーマンで運動のサポートや食事管理をしてくれることですよね。
ですが、ジムはモチベーションが維持できなければ継続するのは大変です。
もし会員の継続力が高いのが売りのジムであれば、その魅力をストーリーにしてジムに通うことでどんな未来が手に入るのかを伝えるとよいでしょう。
「昨年入会されたAさんは、もともとジムに通ってはいたものの、いつも続かないという悩みをお持ちでした。ですがこのジムでは、専属のトレーナーがAさんのちょっとした変化に気づき寄り添ってくれるので、今日は休もうかなという気持ちにはならないそうです。その結果、半年間毎日欠かさず通われていらっしゃいますよ」
このように伝えれば、聞き手が想像していなかった「このパーソナルジムに通えば継続できる」というプラスアルファの魅力が伝わります。
さらに「今では痩せて体のラインのでる服にもチャレンジしたり、お洒落が楽しいとおっしゃっておられました」と、ストーリーによって聞き手に新たな気づきがあるとより感情が揺さぶられます。
このようにストーリーテリングは、商品やサービスの魅力に対して、それを利用した時の未来がどうプラスに変化するのかをイメージさせることができる手法です。
タイプ④苦労話
ファンを増やしたいときは、ストーリーの前半に苦労話を語りましょう。
成功者は憧れの気持ちとともに嫉妬心を持たれがちですが、苦労話を交えたストーリーテリングを活用すると「この人を応援したい」とファンの心をくすぐります。
例えば新規開店のお店で顧客を獲得したい場合、下記のように苦労話を事実に基づきストーリーにして伝えれば「この人ももともとは苦労人だったんだ」「頑張っているこの会社を応援したい」という気持ちになるでしょう。
「本来なら4月に開店する予定だったのですが、資金難と人材難で一度はお店をあきらめました。しかしそのあとも、あきらめがつかず、クラウドファンディングで売り込んでみたところそれが成功し、もともと出店予定だった形態も変えて人材不足もクリアしたので、計画から約3年越しになりますが、やっと夢がかたちになりました」
苦労話は人の共感を呼び、その人を応援したいという気持ちが芽生えやすくなります。
さらに成長の軌跡や背景が見えると人は感情移入しやすくなるため、ファンになりやすくなりますよ。
タイプ⑤一歩を踏み出すストーリー
一歩を踏み出すストーリーは、聞き手の背中を押すエールになります。
あなたが一歩踏み出せさえすれば、よりよい未来が手に入ることをイメージさせ、その一歩を応援しましょう。
例えば、相手をオフ会など特定のイベントへ招待したい場合に有効です。
「私も昔結婚を考えていた人にふられてね、マッチングアプリも惨敗してずっと落ち込んでいたの。でもよく行く本屋さんでたまたま本好きのための合コンが開催されていて、気軽な気持ちで参加したら、そこでいい人と出会えたのよ。パートナーとまでは見つけれなかったけど、趣味の合う友達が見つかって、今すごく楽しいよ。」
恋愛がうまくいかず悩んでいる人を応援したいとき、このように語れば、相手に一歩踏み出せばもしかすると何か良いことがあるかもしれないと、想像させることができますよね。
これをビジネスに応用すると、お見合いパーティーの宣伝や、趣味のイベント開催の告知だけでなく、さまざまな場面で活用できる可能性がありますよ。
【成功事例】ストーリーテリングをビジネスで活用した実例
ストーリーテリングは、ビジネスのさまざまな場面で活用できます。
しかし実際にストーリーテリングを活用しようとすると、「自分ではなかなかいいストーリーが思いつかない」「ちょうどいい真実のストーリーなんて思い当たらない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
実際にストーリーテリングは、いつ、どのような場面で活用されているのか、ストーリーテリングの成功事例を見ていきましょう。
成功例①ニーズと物語がマッチした「五輪招致のプレゼンテーション」
五輪招致のプレゼンテーションは滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」が有名ですよね。
しかし、実はその陰でパラリンピック日本代表の佐藤真海さんの「スポーツの力」を強く訴えたスピーチが、国際オリンピック委員の心をつかみ、五輪招致を大きく引き寄せたという話があります。
佐藤真海さんのスピーチは前半に、佐藤さんが19歳のころ骨肉腫という病気にかかり、足を失ってしまったこと、しかし大学で陸上に取り組むことで、新しい自信が生まれたというストーリーが語られます。
そして後半では津波で故郷が被災したときのこと、そのときも佐藤さんはスポーツ活動を通じて被災者の自信を取り戻す手伝いをしたことが語られました。
その活動の中で佐藤さんは、日本中世界中から多くのアスリートたちが被災地に足を運び、その思いが子供たちの笑顔に繋がっていることから「震災でスポーツの真の力を目の当たりにした、それはオリンピックの価値が及ぼす力だ」という内容で締めくくられています。
素晴らしいスピーチですよね。
国際オリンピック委員会のニーズを理解した上で、スポーツの力が及ぼす素晴らしい影響や、オリンピックの価値について実体験をもとに語られたことで、このスピーチは強い共感を生み、五輪招致を大きく引き寄せたと言われています。
成功例②新しい可能性を見せた「iPod」
Apple社がiPodを発表した頃、すでに世の中には数々のMP3プレーヤーが発売されていました。
ですが気づけば多くの人がiPodを持ち始め、MP3プレーヤーといえばiPodというイメージになっていましたよね。
これはiPodのキャッチフレーズの力が1つの要因だと言われています。
iPodが発売された時のキャッチフレーズは「1000曲もの音楽が、あなたのポケットに」です。
iPodは場所を選ばず音楽聞けるということが、このキャッチフレーズに凝縮されており、iPodをもつことでどんな素敵な未来が待っているのか、一瞬でイメージすることができますよね。
そしてiPodの購入者は、実際に1000曲もの音楽をポケットに入れて持ち歩き、いつでもどこでも好きな音楽を楽しめます。
Appleはこのフレーズで期待値を上げ、それに応えることで、さらに信頼度を高めました。
その後の活躍は誰もが知っていますよね。
iPodは操作性やデザインに優れたデバイスではありましたが、機能面にはあえて触れず、手にしたその先の未来をストーリーにしてその魅力をわかりやすく伝えています。
その後iPhoneに至るまで多くのファンを獲得し続けた事からも、その高い効果がうかがえますね。
まとめ
ストーリーテリングはビジネスのさまざまな場所で活用することができます。
最後にこの記事の要点をまとめます。
- ストーリーテリングは、聞き手の共感をえて内容への理解を深め、話を印象付る手法
- 真実のストーリーと話し手の感情が、聞き手の心に響く
- ストーリーテリングは社内コミュニケーションや営業、プレゼンテーション、マーケティングなどビジネスの場で有用
まずは紹介した事例を参考に、自分のビジネスに合うストーリータイプを見つけてくださいね。
あなたの話に共感してくれる仲間やファンが増えれば、その仲間はきっと、あなたのビジネスを応援してくれますよ。